第二節 第二次農業構造改善事業の実施(西部地区)

796 ~ 811
 湯津上村第二次農業構造改善事業の実施にあたり、栃木県農業構造改善協会が次の諸氏をわずらわし、コンサルタント活動を実施し、その結果をとりまとめたものがつぎの計画書である。
 なお、現地調査ならびにとりまとめに際しては、県農政課、及び現地関係機関、団体等の方々のご協力をいただいた。
        記
宇都宮大学名誉教授           大沼幸之助
栃木県経済農業協同組合連合会技術顧問  海老原武士
栃木県農業構造改善協会事務局長     湯沢長二郎
同右         コンサルタント  宮田新一郎
第二次農業構造改善計画書
  第一 はじめに
 湯津上村は、県「農業の地域計画」では、県北農業地帯で農業地域として、那須地域に含まれ、従来から経済地帯として、北部の平地農村地域に含まれる平坦な純農村地域である。
 総面積三、二四二ヘクタールの土地利用は、農用地一、八二六ヘクタール(五六・三)、山林原野五三一ヘクタール(一六・四%)、宅地九八ヘクタール(三・〇%)、道路等公共用施設団地四二ヘクタール(一・三%)、その他七四二ヘクタール(二三・〇%)である(農業振興地域整備計画書、昭和四八年三月による)。
 村の総世帯数一、二五四戸(昭和五一年現在)のうち第一次産業(農業)九五〇戸(七六・一%)、第二次産業一一六戸(九・三%)、第三次産業一八三戸(一四・七%)で、第一次産業の農業に従事する戸数が圧倒的多数を占めている。
 就業人口では、二、八四四人のうち第一次産業(ほとんどが農業)二、四三二人(八五・五%)、第二次産業二一一人(七・四%)、第三次産業二〇一人(七・一%)で第一次産業の農業への就業が大部分である。
 村の経済を構成する産業別生産額をみると、総生産額三三億五、七二一万円で、うち第一次産業一八億六、七四〇万円(五五・六%)、第二次産業五億八、五二一万円(一七・四%)、第三次産業九億〇、四六〇万円(二七・〇%)であって、第一次産業の生産額が中心である。
 このように、土地は農用地に当てられ、総戸数の七六%は農家であり、就業人口もその八六%は農業で、村の経済を支える生産は農業によっている。即ち純農村の性格である。
 村では、工業を誘致して、農工一体の村づくりを企画しており、品川台地工業団地九〇〇、〇〇〇平方メートルを造成し、工場用地面積五八八、七〇九平方メートルとし、電気機械・輸送用機械・精密機械等内陸型業種を導入し、雇用期待従業員数一、四〇〇名(うち農業からの就業八四〇人、兼業者の半数可能)として、五四年に工業出荷額三六三億円を計画している。これが実現すれば、村に大きな影響があり、純農村のこの村に変化がなされること必至である。
 しかし、現在の経済情勢からみて、急速に計画のような工業が導入されるかどうかが問題である。
 このようにみれば、たとえ工業が導入されても、村の繁栄をもたらす産業の振興は、農業の振興をもって根幹としなければならない。
 その振興の方向は、土地基盤の整備等による農業振興地域の整備を行い、このなかで農業構造改善を行って、適作としての主要作目の強化導入・経営類型の設定・農業機械の近代化をはかり、集団的生産組織の結成等により、自立経営農家を数多く創出して、地域農業を確立し生産性を高めることにほかならない。
  第二 村の概況
1 立地条件
 (1) 位置及び沿革(農業振興地域整備計画にて述べてあるので省略)
 (2) 自然の条件( 〃 )
 (3) 交通・運輸条件( 〃 )

2 産業経済の動向
 本村は東に那珂川、南西に箒川があって立地条件も悪く、首都圏からは遠く離れ農業以外にこれといった産業の発展もみられず純農村を維持してきた。このような条件のなかにあって近年、農業は生産基盤の整備と、機械化を進め、整備された交通網を利用し、首都圏への食糧供給基地としての主産地の形成を図り、また村内に工業団地を造成し工場の誘致を図り、農工一体の村づくりを目ざして推進中である。(表一参照)
表―1 産業経済の動向
区分世帯数就業人口生産額構成比備考
世帯数人口生産額
千円
第1次産業9502,4321,867,44076.085.555.6
第2次産業116211585,2109.37.417.4
第3次産業183201904,60014.77.127.0
1,2492,8443,357,210100.0100.0100.0

3 農家の動向
 生活水準の向上にともない、農業従事者の他産業への流出は著しく、特に若齢人口の流出が激しく、農業就業人口は老齢化をたどる一方である。農家の専業別分類においても表二の如く専業農家が大幅に減少し、二種農家は増加の傾向がはっきりあらわれている。農家戸数は九五〇戸と総戸数の七六%を占め就業人口も産業別に見ると第一次産業の占める割合は八五・五%とその割合は大きく本村における農業振興は極めて重要である。
表―2 専業別農家数及び農業就業人口
区分専兼別農家数農業就業人口
専業兼業2種農家合計
45年(A)1745937672149816911.2021,893
(17.7)(60.4)(78.1)(21.9)(36.5)(63.5)
50年(B)1274145414099505809541,534
(13.4)(43.6)(57.0)(43.0)(37.8)(62.2)
B/A72.969.870.5191.196.883.979.381.0
( )内%

 表二で見ると専業別農家戸数の構成比が四十五年には二種農家が二一・九%であったものが五十年では四三%と倍率となったことをみても兼業所得依存度が高くなったことを示している。
 また、同表の農業就業人口の男女の割合を見ると五十年では六二・二%で女性の割合が高いことは注目すべきことであろう。
 表三では普通畑が激減してその代りに果樹園(梨)が五十年の五・四倍に、また桑園が一四・七倍と急増したことであり、このことは表四を見るとナシの生産量が三二・五倍と増加したことでも明らかであろう。
表―3 農用地面積
区分耕地
普通畑樹園地牧草地合計
果樹園桑園その他
ha
(A)45年1,445324538491,826
(B)50年1,4421922744475401,749
B/A99.859.3540.01,446,7937,581.695.8

表―4 主要作物の生産
区分水稲トマトいちごきゅうり
農家数生産規模生産量農家数生産規模生産量農家数生産規模生産量農家数生産規模生産量農家数生産規模生産量
hatt
45年(A)9811,4455,124489720387245215500288280
50年(B)9501,4425,11352141,1204482801855004127910
B/A96.899.899.8108.3155.6155.6115.8114.3114.385.7100.0100.0146.4500.0325.0

4 各種地域指定等の概要
 (1) 農業振興地域の指定および同整備計画による農用地区域の設定
 昭和四十六年度に指定をうけ、四十七年度に整備計画を策定一、八二六ヘクタールの農用地区域を設定した。

 (2) その他法令に基づく地域指定
  ① 酪農近代化計画
昭和四十七年度に全村指定し目標年次(五二年)に搾乳牛七〇〇頭、乳量三、五〇〇トンの牛乳を出荷する。

  ② 肉用牛生産振興計画
昭和四十九年度、本村の東部地区を肥育団地とし、西部地区を繁殖団地と二つに区分し、年間肥育牛及び子牛を五十五年に三〇〇頭出荷する計画である。

  ③ 県営圃場整備事業
昭和四十二年度に指定をうけ、昭和四十三年度から実施、大田原と本村で四二〇ヘクタールを推進し、本村分一九二ヘクタールは四年間で完了した。(巻川地区)

  ④ 県営一般農道整備事業
昭和四十七年度に指定をうけ、昭和四十八年度から、五十二年度まで延長一、三五六メートル、幅員六メートル、受益面積三二〇ヘクタールで実施中である。

  ⑤ 果樹広域濃密団地
昭和四十九年度本村の東部地区を指定し、昭和五十五年度に五〇ヘクタールの梨園地を設定、出荷量一、五〇〇トンとする。

  ⑥ 県営圃場整備事業
昭和四十八年度(蛭畑地区)に指定をうけ、昭和四十九年から八年計画で四二〇分の三九六・五ヘクタールで実施中である。

  ⑦ 県営一般農道整備事業
昭和五十年度に指定をうけ、昭和五十一年からの計画で延長三、五二二メートル、幅員六メートル、受益面積三六〇ヘクタールで実施中である。

 本村はこのような各種の地域指定事業を意慾的にしかも計画的にとりいれて実施しており、その成果も遂次あがってきている。すなわち、酪農においては五十年で搾乳五三〇頭で目標の七六%の達成率である。
 また、果樹団地(梨)については指定後日が浅いにもかかわらず五四%の栽培面積であり良質のものが生産され、市場受けが良いという。
  第三 計画地区の概要
1 位置および地区の構成
 (1) 位置
当湯津上村西部地区は、村の中心部より西に位置し、南側は箒川に接し地勢は平坦な水田地帯である。当地区を西東に県道大田原~小川線が通り、交通機関としては定期バス大田原・西那須野・小川線があり村の中心部まで約六キロメートル、一〇分程度であり国鉄西那須野駅まで二〇キロメートル、車で三〇分ほどである。地区の境界は南側を箒川境に改良区受益地域で区分される。

 (2) 地区の構成
本地区内でも集落ごとに表五をみるとかなり変化が多い。一戸当り耕地面積でも蛭田中の一・五二ヘクタールが最も少なく、最も多いのは、蛭畑東の二・五ヘクタールである。蛭畑西に樹園地が三ヘクタール、田宿に一ヘクタールあるほかはいずれも水田率が九〇%以上であり、地区平均で九三・五%と高い水田率を示している。

表―5 2次構計画西部地区の構成
集落名農家戸数耕地面積1戸当面積
樹園地牧草地
hahahahahaha
田宿2847311511.82
佐良土西27394431.59
蛭畑東37864902.43
〃中28533562.00
〃西375843651.76
蛭田下58915961.66
〃中21311321.52
〃上35563601.71
2714612741493村平均
構成比%1.70.100.010.001.82(1.84)
構成比%93.55.50.80.2100

2 農業の概況
 (1) 専業別農家数(表六を参照)
表―6 専兼別農家数
集落名総農家数専業農家うち男子年産年令人口のいない農家第1種兼業農家第2種兼業農家
世帯主あとつぎ兼業世帯主兼業あとつぎ兼業その他の世帯員兼業
田宿28216455210
佐良土西276210135111
蛭畑東37128471258
〃中28811215518
〃西374233109110
蛭田下5853361110620
〃中21182612
〃上3531211441211
2713051513551471890
構成比55.733.2
10011.1(100)(23.2)(33.8)(31.1)(11.9)

 (2) 農産物販売金額規模別農家数(表七を参照)
表―7 農産物販売金額規模別農家数
集落名総農家数販売なし30万円未満30~7070~100100~150150~200200~300300~500500~700700~1,000
田宿2851333310
佐良土西2722534263
蛭畑東37322588711
〃中28133321051
〃西37264564361
蛭田下5825721557141
〃中211324434
〃上35227347631
271102931254134435233
構成比1003.010.711.99.215.112.515.919.11.01.0

 (3) 経営耕地規模別農家数(表八を参照)
表―8 経営耕地規模別農家数
集落名総農家数0.5~ha未満0.5~1.01.0~1.51.5~2.02.0~2.52.5~3.03.0~5.05.0ha以上
田宿282544265
佐良土西274743225
蛭畑東37225544141
〃中282443339
〃西3764646641
蛭田下5867121310271
〃中212472213
〃上354564835
271283848383727523
構成比10010.314.017.714.013.710.019.21.1

 (4) 農家人口と就業の動向
  ア 男女年齢別世帯員数(男女計)(表九を参照)
表―9 男女年令別世帯員数(男女計)
0~14才1516~1920~2425~2930~3435~3940~4445~4950~5455~5960~6465~6970以上
地区計1.4653223510710591687911810991776181121
構成比10022.02.47.37.26.24.65.48.17.46.25.34.25.58.3

  イ 就業状態別世帯員数(男女計)(表一〇を参照)
表―10 就業状態別世帯員数
区分16才以上の世帯員数自家農業だけの従事者自家農業と他の仕事に従事その他の仕事だけ従事仕事に従事しなかった人
自家農業主他の仕事主
集落名総人数内仕事が主総人数内仕事が主総人数内仕事が主総人数内仕事が主総人数内仕事が主
田宿108463122222423661010
佐良土西10042361212141414141817
蛭畑東15457443737282813131
〃中110483120201616771918
〃西151633725244040771615
蛭田下249108674240626112122522
〃中861761212393933159
〃上150291734344544873430
1,1084102642042012682655856168152
構成比10037.064.418.498.524.25215.2

  ウ 自家農業に従事した世帯員数(表一一を参照)
表―11 自家農業従事日数別世帯員数
区分男女計男計女計
集落名農業従事29日以下〃30~59〃60~99〃100~149〃150~以上農業従事149日以下〃150日以上農業従事149日以下〃150日以上
田宿92181341443482820442123
佐良土西689611141341420342311
蛭畑東12230851069592831632538
〃中8414153646421725422121
〃西1283710121653643628643925
蛭田下212632326356510165361118229
〃中68311817113529633285
〃上108321441939604119482820
8822349063128367443258185439267172
構成比10026510.27.114.541.610058.241.810058.541.5

 (5) 主要農産物の生産
  ア 作物別栽培農家数・収穫面積と販売農家数(表一二を参照)
表―12 作物別栽培農家数・収穫面積と販売農家数
区分水稲麦類トマトきゅうり
集落名農家数収穫面積販売農家農家数収穫面積販売農家農家数収穫面積販売農家農家数収穫面積販売農家
aaaa
田宿284.519281515010
佐良土西273.8612571566192253
蛭畑東368.21236350325212726
〃中285.168271601251026172
〃西375.0323532835192
蛭田下568.641561627683559739324
〃中213.0462011001412216171
〃上355.460331601174
26843.939260478803010810491851189
1戸平均164193.60.6

  イ 施設園芸農家と作物別収穫農家・面積(表一三を参照)
表―13 施設園芸農家と作物別収穫農家・面積
区分施設農家数と施設面積    作物別収獲農家数と面積
ビニールハウストマトきゅうりいちごその他野菜花き花木
農家数面積内加温農家数面積農家数面積農家数面積農家数面積農家数面積
集落名農家面積
aaaaaaa
田宿533110110421
佐良土西45345311722011711313
蛭畑東37325024313226
〃中560560560
〃西665442665
蛭田下1227312273814710174
〃中
〃上133123133
365902951112240142071416853413
1戸平均16.417.620.014.812.06.83.0

  (6) 農用機械の保有(表一四・表一五・表一六を参照)
表―14 個人有農用機械
区分動力耕うん機
5PS未満5~10PS
集落名実農家数台数農家数台数農家数台数
田宿214710102126
佐良土西23332022
蛭畑東1720451315
〃中33543354
〃西2223294222
蛭田下466914154345
〃中16191166
〃上28292426
20630491127129142
1戸平均(100)(41.8)(58.2)
15141.1
耕地1ha当(493)0.620.260.29
 
区分農用トラクター
10~15PS15~20PS20~30PS30PS以上
集落名農家数台数農家数台数農家数台数農家数台数台数
田宿443344
佐良土西115555
蛭畑東669999
〃中77666611
〃西2325336611
蛭田下332244
〃中10101111
〃上66442211
60603333373733133
1戸平均(45.1)(24.8)(27.8)(2.3)
1.01.01.01.0100
耕地1ha当0.10.070.080.010.27

表―15 個人有用機械
区分走行式動力防除機動力ふんむ機動力散粉機動力田植機バインダー自脱コンバイン米麦用乾燥機
集落名農家数台数農家数台数農家数台数農家数台数農家数台数農家数台数農家数台数
田宿23212211112121442020
佐良土西101019191010191911111818
蛭畑東333326262020171714143131
〃中11222222221616191911112020
〃西11272715152121262611112323
蛭田下2930282815154242883939
〃中336613132244
〃上77272710101919442525
221331351581591091091761766565180180
1戸平均1.01.01.01.01.01.01.0
耕地1ha当(493)0.0040.270.320.220.360.130.27

表―16 共有農用機械
区分農用トラック農用トラクター走行式動力防除機動力ふんむ機動力散粉機動力田植機バインダー自脱コンバイン米麦用乾燥機
5PS未満5~1015~2020~3030以上
集落名農家数台数農家数台数
田宿883312111
佐良土西66
蛭畑東8811143
蛭畑中77222
蛭畑西44111221
蛭田下1717162221105
蛭田中111114
蛭田上4444434
555528141853517991
1戸平均(271)1.00.5
耕地1ha当(493)0.11

  (7) 水稲作業の受委託状況(表一七・表一八を参照)
表―17 水稲作業の受委託状況
区分水稲作業の受委託状況農家数と面積(a)総延面積
実農家数耕起代かき田植え防除稲刈り左の全作業全部を請負に出した農家数
集落名農家数面積農家数面積農家数面積農家数面積農家数面積
田宿76283733352323170524231,260
佐良土西764096413120320324511,090
蛭畑東3319831983198216831982960
蛭畑中1110011001120110011201540
蛭畑西9926692664106514661714955
蛭田下88537853753424326534832,090
蛭田中6634063403182130532211,214
蛭田上88501748122212221748121,905
49472,634472,668241,421211,364341,9271710,014
対農家比1817.417.40.090.080.13
構成比26.326.614.213.619.3100

表―18 自立経営農家等育成計画
経営類型作目自立経営農家集団組織団地
1型 水稲専業経営米+麦6戸5集団 67戸
2型 果樹,水稲複合経営なし+米6戸2集団 16戸
3型 野菜,水稲複合経営いちご+米8戸4団地 23戸
4型 野菜,水稲複合経営トマト+きゅうり+米12戸2団地 15戸
32戸7集団 83戸6団地 38戸

  第四 農業構造改善計画の構成
 第二次農業構造改善事業の計画地区である湯津上西部地区は、県営圃場整備事業による巻川土地改良区(四三年から二〇〇ヘクタール、四六年完了)と南部土地改良区としての蛭畑地区(四九年から五六年まで四二〇ヘクタール、進行中)がある。この基盤整備にもとづいて、地域農業者の意向による計画の構想であるべきである。これらの構想に関して考慮すべき点をあげれば次の如くであろう。
1 基本方針
(1) 整備された土地基盤をもとに、①稲作を中心に労働生産性の高度化をはかるため、②稲作の機械化作業一貫体系を確立して、③労働の省力化を実現し、余剰労働を他の主要作目にふり向け、所得の増大を策して、自立経営農家の育成を行う。

(2) このため農業近代化としての大型機械・施設・設備の導入を図る。

(3) 稲作の省力化による余剰労働をもとに、主要作目の強化導入を行ないこれを中心に、複合経営を創出して、自立経営農家の育成に資する。すなわち①トマト・きゅうり・②いちご・③果樹(なし)・④水田裏作の麦類等を推進する。

(4) これらの実現のため集団的生産組織の結成と育成を図る。

(5) また、兼業農家の増加傾向に伴なって、稲作生産組織等による受託耕作・受託作業を推進することにより、作業・経営の規模拡大(特に稲作)を図ると共に、農地の流動化を進める。

(6) 農産物の有利な販売のため、農協の活動と共に集出荷組織、自主検査(野菜、果樹)等流通機構の改善を図る。

2 自立経営等育成計画
 (1) 目標経営類型
 基本方針に基づいての自立経営等の育成のためには、経営類型の設定がいる。この目標をどうするかは、まず、主要作目の採用導入を何にするかにかかわってくる。この地区の作物収穫面積と総農家に対する栽培農家数をみると、作物収穫面積四九、七二〇アール、総農家二七一戸のうち、水稲作は、四四、五七四アール(八九・七%)二六八戸(九八・九%)、野菜一、四四六アール(二・九%)、トマト・きゅうり・いちごの延作付農家数三二四戸(一一九・六%)、麦類八八〇アール(一・八%)、四七戸(一七・三%)、なし三一〇アール(〇・六%)、三戸(一・一%)等である。
 したがって、米・トマト・きゅうり・いちご・麦類・ナシが主要作目で、経営類型はこれらの作目の編成によるべきで、次のように設定されていることは、至極当然のことである。
 一型 水稲専業経営(米+麦)
 二型 果樹水稲複合経営(ナシ+米)
 三型 野菜水稲複合経営(いちご+米)
 四型 野菜水稲複合経営(トマト+きゅうり+米)
 この経営類型による自立経営の所得目標を何程にするかが問題である。
 県における農業所得水準は、「農業の地域計画」によれば、専業農家の農業所得を、五十五年が四〇〇万円、六十年で五〇〇万円と設定している。したがって、この経営類型においても所得目標は少なくとも四〇〇万円を上げる努力を払うべきである。村の計画地区指定調書にある所得二五〇~二七〇万円は少なすぎるのではないか、検討を要するところである。参考のために、「県農業の地域計画」によるモデル的農業経営類型等をもとに、各類型の試案をあげれば表一九のようなものも考えられよう。

表―19 経営類型別所得目標等
経営類型労働力作目規模生産量租収益経営費所得所得率
家族kg万円万円万円
1型 水稲専業経営(米+麦)2.5人全体
4.0ha19,200536.0148.0388.072.4
(10a当り)(480)(13.4)(3.7)(9.7)
現行米価kg272.8円より高くし280円とした県50年生産費用より家族労賃を差引いて65.8千円=37.2千円
全体2,00035.06.528.581.4
0.5ha(400)(7.0)(1.3)(5.7)
(10a当り)kg175円とした県50年小麦大麦平均生産費用家族労賃を差引き12.9千円
571.0154.5416.572.9
2型 果樹水稲複合経営(なし+米)2.5人なし全体44,400666.0360.0306.045.9
1.2ha(3,700)(55.5)(30.0)(25.5)
(10a当り)kg150円
全体4,800134.037.097.072.4
1.0ha(480)(13.4)(3.7)(9.7)
(10a当り)
800.0397.0403.050.4
3型 野菜水稲複合経営(いちご+米)2.5人いちご(施設)(促成電照)(宝交早生)全体6,000540.0260.0280.051.9
20a(3,000)(270)(130)(140)
(10a当り)
全体7,200201.055.5145.572.4
1.5ha(480)(13.4)(3.7)(9.7)
(10a当り)
741.0315.5425.557.4
4型 野菜水稲複合経営(トマト+きゅうり+米)2.5人トマト(施設)全体24,000536.0294.0242.045.1
20a(12,000)(268)(147)(121.0)
(10a当り)
きゅうり(施設トマトの跡作)全体5,00082.033.049.059.8
10a(5,000)(82)(33)(49)
(10a当り)
全体7,200201.055.0145.572.4
1.5ha(480)(3.7)(9.7)
(10a当り)
819.0382.5436.553.3

 (2) 自立経営等の育成計画
 村の計画地区指定調書の計画によれば、自立経営農家・集団生産組織・団地等の育成は表一八のとおりである。

  第五 酪農近代化計画
1 基本構想
 本村は農業を中心とした村で米生産農家が最も多く、農用地の六五%を占めている米単作農村である。
 昭和四十四年より全村圃場整備作業に取り組み、現在まで一、二〇〇ヘクタール実施内七〇〇ヘクタールを完成し、米の生産合理化を図ってきたところである。
 このほか村の北央部の畑作地帯の大規模開発(畑基盤整備事業)三二〇ヘクタールを現在着手し、昭和五十四年度に全量完成し、この内二五〇ヘクタールは酪農向の草地基盤整備事業実施の計画である。
 今後は、これらの開発整備による余剰力を他作目又は専業化へと移行させ、各地域の特性をふまえて生産団地をはかり、高能率的な近代経営を推進し、安定所得を目標に村の農業改善指針を確立することが課されている。
 本村の畜産経営も最近急速に伸長したほか、米生産合理化等により他作目も大幅な増加を占め、特に畜産をめぐる情勢は、ここ数年安易なことはなくきびしいものであった。これらをふまえて村振興計画(昭和六十年目標)と併せて文化と調和の住みよい村づくりを基本として環境保全をはかり、各作目ごとの安定経営拡大を目標に、今回村の酪農振興計画を定め、本村の諸条件を考慮し、自立経営としての草地酪農専門経営(昭和六十年所得目標八、〇〇〇千円)及び水稲プラス酪農経営(昭和六十年所得目標四、五〇〇千円)の指標を示して酪農の近代化を推進する。

2 生乳の生産量の目標(表一参照)
表―1 牛乳生産量の目標
年度総頭数成牛頭数経産牛頭数経産牛1頭当り年間産乳量生牛生産量
kgt
昭和50年1,0808217244,8003,475
昭和51年1,1558787854,8503,807
昭和52年1,2359398404,9004,116
昭和53年1,3201,0038984,9504,445
昭和54年1,4101,0729595,0004,795
昭和55年1,5101,1481,0425,0005,210
昭和56年1,6151,2271,1145,0506,196
昭和57年1,7151,3031,1835,0505,974
昭和58年1,8201,3831,2565,1006,406
昭和59年1,9301,4671,3325,1006,793
昭和60年2,0401,5501,4085,1007,180

3 乳牛の飼養頭数の目標(表二参照)
表―2 乳牛の飼養頭数の目標
現在
総農家戸数
(A)
飼養農家戸数
(B)
乳牛頭数普及率
(B)/(A)
(C)/(D)1戸当り飼養頭数
(D)/(B)
経産牛
(C)
未経産牛
(D)
9501007243561,08010.56710.8
 
目標
飼養農家戸数
(B)
乳牛頭数経産牛率
(C)/(D)
一戸当り飼養頭数
(D)/(B)
経産牛
(C)
未経産牛
(D)
751,4086322,0406827

4 集乳の合理化のための措置
 1 集送乳機構の整備
 本村の酪農者は現在三つの農協に所属し、このうち栃酪五〇%、北酪四五%、山麓酪連五%という所属率である。酪農家は、ほとんどがパルククーラ及びユニットクーラを設置し乳質保全に努めている。
 今日この集乳については、各酪農協単位に各戸集乳している現況である。今後は、この集乳合理化については、村内に共同集乳所及び処理施設を新設し、各農協単位にこだわらない集送乳整備を推進したい。

5 その他酪農の近代化を図るために必要な事項
 1 共同利用施設整備計画(表三参照)
表―3 共同利用施設整備計画
施設名現在(昭和目標備考
施設の規模能力管理主体利用戸数利用面積施設の規模・能力管理主体利用戸数利用面積
haha
飼料生産調整施設トラクター1セット田島酪農機械利用組合527トラクター2セット田島酪農機械利用組合530水田畑
トラクター1セット狭原酪農組合512トラクター2セット狭原酪農組合515水田畑
トラクター1セット蛭畑酪農組合415トラクター2セット蛭畑酪農組合515水田畑
トラクター2セット金丸原粗飼料生産利用組合523トラクター3セット金丸原粗飼料生産利用組合525
トラクター2セット中の原粗飼料生産利用組合522トラクター4セット中の原粗飼料生産利用組合522
トラクター1セット中の原飼料作物生産合理化組合625トラクター3セット中の原飼料作物生産合理化組合625
育成施設草地42ha(放牧場)湯津上村60(120人)42草地42ha(放牧場)湯津上村60(120人)42
ふん尿処理施設トラクター1セット中の原ふん尿処理組合520(120頭)拡大土地還元用機械中の原ふん尿処理組合520(120頭)
トラクター1セット金丸原ふん尿処理組合5拡大土地還元用機械金丸原ふん尿処理組合5
トラクター外尿散布機湯津上中部ふん尿処理組合515(100頭)
堆肥集結場乾燥場ふん尿貯溜場湯津上村60100(650頭)

 2 指導組織の整備
 現況は、村が中心となり、県及び酪農協と連絡を密にして指導を実施している。
 今後は、この体制の強化と那須北の獣医師会とも協力して商協も指導の一員として加わり指導組織の強化を図る。

 3 乳牛能力の向上
  (1) 基礎雌牛の整備
イ 村内の血統能力の優秀な牛を保留して受精強化を図り優良種増進に努める。

ロ 基礎牛の助成を行い安定した改良増殖に努められるよう酪農家に対して整備強化を図るよう指導したい。

  (2) 乳牛の登録事業を促進する。
   改良推進事業の実施(表四年次別乳牛増殖計画、参照)
表―4 年次別乳牛増殖計画
年次年初頭数
経産牛頭数増加減少年末頭数年間増殖頭数前年対比伸長率年末頭数÷①
生産数町外より移入の数

③+④
年初頭数に対し年産頭数に対し町外へ移出の数⑩移入頭数に対するへい死
⑥+⑦+⑧+⑨+⑩+⑪


と殺へい死と殺へい死





501,0806772471507130637192061115427421060115621,15575107
511,1556778571556130686192201125430221160116061,23580107
521,2356884071596130736192351125432221170116511,32085107
531,3206889871637140787192521145434621370126971,41090107
541,4106895972690150840192671145437321470127401,510100107
551,510691,0427275015090019285115544032157127951,615105107
561,615691,11472802150952193081165443521675128521,715100106
571,715691,183728521501,002193261175446021775128971,820105106
581,820691,256729051501,055193451185448721875129451,930110106
591,930691,332729601501,110193671195451821975121,0002,040110106
602,040691,408721,0141501,164193881205454922075121,0542,150110105

  第六 村酪農近代化計画認定申請説明
1 農業の概要
 本村は、総世帯数一、二五四戸(昭和五十一年現在)のうち農家戸数九五〇戸の純農村地帯で主たる作目は水稲で一部を除き、殆んどが複合経営の農家が多い。
 村の東部地区は水稲プラス畜産・果樹・施設園芸・南部地区は水稲プラス畜産・施設園芸・西部地区は水稲プラス施設園芸という経営状況である。このほか村の北央地区は畑野菜及び酪農の多い地区で、特に酪農については村の飼養戸数の六〇%を占めており、乳用牛も七〇〇頭近い飼養である。
 現在村営の放牧場四二ヘクタールを保有しているが、これらを地域畜産の振興のため乳用牛育成牧場として活用しており、今後も安定した預託事業を展開し、地域の環境保全に努め安定した畜産振興をはかり、耕種農家との堆厩肥交換業務も併せて実施し、経営の安定を目標とする。

 (1) 農家戸数および畜産農家戸数(表五参照)
表―5 農家戸数および畜産農家戸数
区分専業別農家構成
1種農家2種農家計(A)
専業兼業
戸数127414409950
 
区分畜産別農家構成1戸当り乳牛飼養農家率
乳牛用肉用牛乳牛飼養農家村B/A
戸数(B)100903023010.810.5%
頭羽数1,0803804,54012,000

 (2) 農業生産状況(表六参照)
表―6 農業生産状況
区分農作物
麦類雑殻豆類いも類野菜果樹飼料作物
面積(ha)1,42043959564225190
生産額(千円)1,272,00012,0007,00013,50012,000363,00023,000
 
区分農作物養蚕畜産物
その他生乳肉牛その他
面積(ha)51,84942
生産額(千円)9,0001,384,80051,000359,00049,000659,00024,0002,0001,093,000

 (3) 農業所得の概要
 本村は純農村地帯であるので種々作目を振興してきた。特に畜産物は、米につぐ生産額をあげてその実績も年々向上し、畜産物の内生乳販売額も三億五、九〇〇万円と米を除く作目の内第二位を占めている。

2 酪農の概要
(1) 本村は、戦後入植の人達が飼養のはじめで、その後水田地帯に入り昭和三十年当時は一戸平均三~四頭の飼養であった。昭和四十年には六五〇頭、昭和四十六年には第二次酪農近代化計画を樹立して、この計画にもとづき近代化施設の整備を各種の事業導入により整備し現在の一、〇八〇頭の酪農団地となった。

 (2) 技術者組織
 村が中心となり各酪農団体関係機関と連絡協議しているほか、関係している獣医師又は商協者とも連絡をとり酪農者の安全を確保している。

 (3) 乳牛の能力及び保健衛生
 本村の乳用牛の能力は経産牛一頭当り四、八〇〇キログラム、平均乳脂率三・四%、無脂固形分八・二〇%である。

 今後は村単で優良精液による改良事業を実施、能力の良い牛を保留して改良増殖を図る。

 保健衛生面については全農家冷却施設を設置してタンクローリーによる個別集乳を強化し、乳質の改善、保全に努める。

 (4) 集乳等の現況
   各酪農者に冷却施設を整備し、戸別集乳を実施している。
3 農地利用状況(表七参照)
表―7 農地利用状況
区分農地
牧草地飼料作物作付面積(延)(5)
面積計うち裏作可能面積左のうち田,畑,輪田面積のうち飼料作物作付面積(A)普通畑面積(B)左のうち飼料作物作付面積(2)個人利用(3)公共利用(4)
全体1,5001,380553601907542245
乳牛302101353542220
 
区分野草地農用地面積計飼料生産面積計林地面積頭数乳牛1頭当り飼料作物作付面積
全体211,97936253218.6a
乳牛1,1002101,08020.3