一 厚ク力ヲ小学校に可用事
二 速ニ師表学校ヲ興スヘキ事
三 一般ノ女子男子ト均シク教育ヲ被ラシムヘキ事
四 各大学区中漸次中学ヲ設クヘキ事
五 生徒階級ヲ踏ム極メテ厳ナラシムヘキ事
六 生徒成業ノ規アルモノハ務テ其大成ヲ期セシムヘキ事
七 商法学校一二所ヲ興ス事
八 凡諸学校ヲ設クルニ新築営繕ノ如キハ務テ完全ナルヲ期ス事
九 反訳ノ事業ヲ急ニスル事
すなわち、まず第一に小学校を開設してその普及充実に努むべきこととした。政府はこのように、小学校開設について非常に熱意をもち、全国に向かって強く奨励したから、各町村でも万難を拝してこれに当たったのであった。
小学校を開設するに各府県は左の三様をとった。
第一は従来あった寺子屋私塾を全廃して新しく小学校を設置したもの
第二は、寺子屋・私塾をそのまま存置して、これとは別に公立小学校を設け、しだいにその中に生徒を吸収し、徐々に古い形の教育機関を整理したもの
第三は、寺小屋・私塾等を学区制に基づいて併合して、そのままこれを小学校に再編したもの
右のうち、第三様式をとったものがもっとも多く、本県の実情も大体これによるものであった。したがって、校舎も寺院や民家を借用したものが多く、教師も手習師匠をそのまま小学校教師に任用したものが多かった。
小学校開設に当たっては、各町村ごとに開学願書を県に提出させ、県はこれに許可証を与えて開学のはこびとしたのである。
このようにして小学校は続々と開校されたが、肝心の就学率はあまりかんばしくなかった。要するに就学についての親の理解と、子供自身の意欲の問題であったろう。
明治六年栃木県全体の小学校生徒の状況は、次のとおりである。
学齢総計 一〇一、一一六人内男五五、六八二人、女四五、四三四人
就学総計 二三、五七二人内男一七、四一六人女六、一五六人
就学率 二三・三三%男三一・二八%女一三・五四%
明治六年から明治十年までの、本県就学率および、日本全体の就学率は左のようである。
年次 | 明治六年 | 明治七年 | 明治八年 | 明治九年 | 明治十年 | |||||
全国 | 栃木県 | 全国 | 栃木県 | 全国 | 栃木県 | 全国 | 栃木県 | 全国 | 栃木県 | |
男 | 39.9 | 31.2 | 46.2 | 59.4 | 50.5 | 68.3 | 54.2 | 67.3 | 56.0 | 61.5 |
女 | 15.1 | 13.5 | 17.2 | 22.5 | 18.6 | 26.4 | 21.0 | 29.4 | 22.5 | 24.3 |
平均 | 28.1 | 23.3 | 32.3 | 41.8 | 35.2 | 47.3 | 38.8 | 49.1 | 39.9 | 43.3 |
明治十年の小学校一覧表(抜粋)
明治十一年五月、本県は「栃木県小学校一覧概表」という冊子を発行した。ここには本村に関係したもののみを抜粋し、参考に供したのである。現在と比較して隔世の感があり、興味あるものがあろう。
小学区番号 | 校名 | 位置 | 開業 | 学区内人員 | 同就学人員 | |||
同学令人員 | 同不就学人員 | |||||||
第四十番中学区 | 第七十七番 | 温習舎 | 湯津上村 | 同八年三月 | 八五五 | 七一 | ||
男 | 四二九 | 男 | 四九 | |||||
女 | 四二六 | 女 | 二二 | |||||
一五一 | 八〇 | |||||||
男 | 七一 | 男 | 二二 | |||||
女 | 八〇 | 女 | 五八 | |||||
第七十九番 | 正風学校 | 新宿村 | 同七年四月 | 九五〇 | 五二 | |||
男 | 四七二 | 男 | 四三 | |||||
女 | 四七八 | 女 | 九 | |||||
一四七 | 九四 | |||||||
男 | 七四 | 男 | 三一 | |||||
女 | 七三 | 女 | 六四 | |||||
第八十番 | 咲山分校蛭畑学校 | 蛭畑村 | 同九年五月 | 二〇二 | 二四 | |||
男 | 九八 | 男 | 一七 | |||||
女 | 一〇四 | 女 | 七 | |||||
三三 | 九 | |||||||
男 | 一九 | 男 | 二 | |||||
女 | 一四 | 女 | 七 | |||||
第八十番 | 修斎分校毓民学校 | 佐良土村 | 同八年四月 | 五九七 | 三七 | |||
男 | 三一五 | 男 | 二八 | |||||
女 | 二八二 | 女 | 九 | |||||
七八 | 四一 | |||||||
男 | 四五 | 男 | 一七 | |||||
女 | 三三 | 女 | 二四 |
小学区番号 | 校名 | 生徒階級 | 学資金 | 歳出入 | 教員 | 学区内町村 | ||||||
下等小学 | 上等同 | 校掌(事務官) | ||||||||||
第七十七番 | 温習舎 | 八級 | 五一 | 四級 | 積金 | 入 | 九二円三〇銭六厘二毛 | 藪惣之助 | 湯津上村 | |||
七〃 | 八 | 三〃 | 八円八一銭六厘一毛 | 挟原村 | ||||||||
六〃 | 九 | 二〃 | 出 | 九二円三〇銭六厘二毛 | 深沢惣吾 | 小船渡村 | ||||||
五〃 | 三 | 一〃 | ||||||||||
第七十九番 | 正風学校 | 八級 | 三一 | 四級 | 四 | 寄付金 | 入 | 八一五円七二銭九厘七毛 | 原蕃二郎 | 片府田村 | ||
七〃 | 五 | 三〃 | 二、七七六円六一銭 | 新宿村 | ||||||||
六〃 | 八 | 二〃 | 出 | 八〇八円九八銭七毛 | 深沢政十郎 | 倉骨村 | ||||||
五〃 | 四 | 一〃 | 蛭田村 | |||||||||
第八十番 | 咲山分校蛭畑学校 | 八級 | 一五 | 四級 | 二 | 寄付金 | 入 | 一六四円三二銭四厘七毛 | 蛭畑村 | |||
七〃 | 三 | 三〃 | 一、〇八〇円六二銭 | |||||||||
六〃 | 四 | 二〃 | 出 | 一五五円七五銭三厘六毛 | 吉成喜十郎 | |||||||
五〃 | 一〃 | |||||||||||
第八十番 | 修斎分校毓民学校 | 八級 | 一一 | 四級 | 寄付金 | 入 | 一二七円四七銭七厘 | 佐良土村 | ||||
七〃 | 九 | 三〃 | 一、〇〇一円 | |||||||||
六〃 | 一〇 | 二〃 | 保護金 | 出 | 一二五円五二銭五厘 | 佐藤清一郎 | ||||||
五〃 | 七 | 一〃 | 一二五円五二銭 |