5 実業補習学校・青年学校

867 ~ 871
 明治三十年頃、欧米各国の教育振興の影響を大きく受けて、日本の教育制度の手直しをする必要に迫られ、実業教育の振興と高等教育の改革、義務教育年限の延長など全体にわたって拡充整備がはかられた。
 明治三十二年二月七日には実業教育の振興がはかられ、各種の実業学校を統一的に規定する実業学校令が定められ、実業補習学校も発足をした。本村の記録を見ると変遷は次のとおりである。
大正三年五月二日   蛭田実業補習学校創設
〃 三年五月十一日  湯津上実業補習学校創設
〃 四年四月十日   佐良土実業補習学校創設
〃 十五年七月一日  湯津上村青年訓練所創設
昭和十年三月三十一日 制度改正ノ結果青年訓練所実業補習学校廃止セラレ同時ニ青年学校開設

〃 十年八月一日   湯津上村青年学校学則認可セラル
本校ヲ湯津上尋常高等小学校ニ東分校ヲ湯津上尋常小学東校ニ西分校ヲ湯津上尋常小学西校ニ置ク

 大正三年、蛭田小学校に蛭田実業補習学校を併設するに際し、時の杉井学時村長の、つぎのような式辞が残っている。
     蛭田実業補習学校設置
 大正三年蛭田小学校に実業補習学校が置かれ、村長杉井学時は次のような式辞を述べた。
    式辞
村立蛭田実業補習学校ハ本日ヲ以テ始業ノ式典ヲ挙グルヲ得たり、顧フニ本科ノ目的タル小学校卒業ノ子弟ニ授クルニ、実業上ノ智識ト技能ヲ以テシ、着実勤勉ノ実際的人物ヲ養生(ママ)シ、以テ大ニ本村農界ノ発展ヲ図ラント欲スルニ在リ、是レ先ニ有志ノ建議ヲ容レ村会ノ決議シタル所以ナリトス、然ラバ則チ事ニ従フモノ、職員ト云ハズ、生徒ト云ハズ、奮テ斯学ニ尽瘁シ、以テ村民ノ熱情ニ報ヘ、農界発展ノ実ヲ挙ケザル可カラズ、果シテ然ルヲ得ンカ、其影響スル所、豈啻(タダ)ニ本村農業ノ向上発展ノミニ止マランヤ、一言ヲ叙シ式辞トス
   大正三年七月四日
              湯津上村村長

 昭和十年に青年学校が開設された。男女青年に対し心身を鍛練し徳性を涵養するとともに、職業及び実際生活に須要な知識技能を授け、国民としての資質を向上することを目的としたもので、やがて義務制となり、時代への要請に協力してきた。
 資料として那須郡湯津上村青年学校学則を紹介して見る。
   那須郡湯津上村青年学校学則
     第一章  総則
第一条 本校ハ栃木県那須郡湯津上村青年学校ト称シ湯津上尋常高等小学校ニ併設シ湯津上尋常小学東校並ニ湯津上尋常小学西校ニ西、東ノ分校ヲ置ク

第二条 本校ハ青年学校令ニ依リ男女青年ニ対シ其ノ心身ヲ鍛練シ徳性ヲ涵養スルト共ニ職業及実際生活ニ須要ナル知識技能ヲ授ケ以テ国民タルノ資質ヲ向上セシムルヲ目的トス

第三条 本校ニ普通科、本科、研究科、専修科ヲ置ク
    普通科 二ケ年トシ第一部第二部ニ分ツ
        但シ第一部ハ通年制トシ第二部ハ季節制トス
    本科  男子五ケ年 女子三ケ年
    研究科 一ケ年
第四条 分校ニ普通科第一部第二部及女子ノ本科研究科ヲ置ク
    第二章   学科及編成
第五条 本校ノ教授時数ハ左ノ如シ
    普通科第一部 毎週男二十九時間 女三十二時間
    普通科第二部 一ケ年男二百三十時間 女三百四十時間
    本科   一ケ年男二百四十時間 女三百四十時間
    研究科  一ケ年男百八十時間 女二百八十時間
第六条 本校ノ学科課程ハ左表ニ依ル
    普通科  第一部 第一号表(別表)
    同    第二部 第二号表(〃)
    本科       第三号表(〃)
    研究科      第四号表(〃)
     第三章  学年及教授期間並ニ休業日
第七条 学年ハ毎年四月ヨリ翌年三月マデトス
第八条 普通科第一部ノ教授時刻並ニ季節ハ左ノ如シ
    第一学期 自四月一日 至八月三十一日
    第二学期 自九月一日 至十二月三十一日
    第三学期 自一月一日 至三月三十一日
    始業終業時刻ハ小学校ニ準ズ
    普通科第二部、本科、研究科ハ月別日割ヲ別ニ定ム
第九条 休業日ハ小学校ニ準ズ但シ普通科第一部ニ於テハ農繁休業二週間ヲ設定ス

     第四章 入学退学
第十条 入学期ハ学年ノ始トシ時宜ニヨリ臨時入学ヲ許スコトアルベシ
第十一条 本校ニ入学スルコトヲ得ルモノ左ノ如シ
普通科 尋常小学校卒業者又ハ年齢十二年以上ニシテ之ニ相当スル素養アル者

本科  普通科終了者、高等小学校卒業者又ハ年齢十四年以上ニシテ之ニ相当スル素養アル者

    研究科 本科卒業者又ハ之ニ相当スル素養アル者
    専修科 専修科ノ入学資格ハ本科二年修了者
第十二条 本校ニ入学セシメントスル者ハ保護者若ハ雇傭主連署ヲ以テ第一号様式ノ入学願ニ履歴書ヲ添ヘ学校長ニ差出スベシ他ノ青年学校ヨリ転学セントスル者ハ入学願・履歴書・青年学校手帳ヲ添ヘテ提出スベシ

第十三条 特別ノ事情アル者ハ其ノ年齢及素養ニ応ジ之ヲ普通科第二年又ハ本科二年以上若クハ研究科ノ相当科ノ相当年ニ入学セシムルコトヲ得

第十四条 本校ヲ退学セントスル時ハ其ノ事由ヲ述べ青年学校手帳ニ出席時数其ノ他必要ナル事項ノ記入証明ヲ受クベシ

第十五条 在学生徒ニハ所定ノ青年学校手帳ヲ交付ス
    前項手帳ニハ必要ナル事項ヲ記録スルモノトス
    第五章 修了及卒業
第十六条 普通科ノ修了及本科ノ卒業ハ全課程ニ付キ平素ノ学修情況並ニ出席時数ヲ標準トシテ之ヲ認定ス

第十七条 修了及卒業ヲ認定シタル時ハ第二号様式又ハ第三号様式ノ証書ヲ授与ス

     第六章 授業料
第十八条 授業料ハ徴収セザルヲ本体トスルモ普通科第一部ニ於テハ月額四十銭ヲ徴収ス

     第七章 賞罰
第十九条 本校生徒ニ対シ必要ニ応ジ賞罰ヲ加フルコトアルベシ
     第八章 附則
第二十条 分校ニ主任ヲ置ク
第二十一条 本学則ハ昭和十年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二十二条 必要ニ応ジ実施細則ハ別ニ之ヲ定ム

第一号表 本校学科課程表
学科課程時数第一年第二年
学科課程課程
修公道徳ノ大要 公民ノ心得仝上
普通学科国語講読、作文、習字仝上
算術筆算、珠算仝上
地理人文、地文及両者ノ関係仝上
国史国史ノ大要仝上
理科理科一般ノ大要仝上
唱歌単音唱歌(簡単ナル複音)仝上
体操体操 教練 遊戯仝上
農業農業ノ大要仝上
家事家事ノ大要仝上
裁縫裁縫ノ一般仝上
二九仝上
三二

第二号表
学科課程時数第一年第二年
学科課程課程
修公二五道徳ノ大要 公民ノ心得仝上
普通学科国語二五講読、作文、習字仝上
数学二〇筆算、珠算仝上
一五
地理一〇人文、地文及両者ノ関係仝上
歴史一〇国史ノ大要仝上
理科二〇理科一般ノ大要仝上
一五
体操五〇体操、教練、遊戯仝上
三〇
職業七〇農業ノ大要仝上
二〇
家事裁縫一八〇裁縫ノ一般家事ノ大要仝上
二三〇仝上
三三〇

第三号表
学科課程時数第一年第二年第三年第四年第五年
学科課程課程課程課程課程
修公二五道徳ノ要旨 公民ノ心得仝上仝上仝上仝上
教練八〇教練陣中勤務信号其ノ他仝上仝上仝上仝上
普通学科国語一五普通文ノ読解作文仝上仝上仝上仝上
数学一五筆算、珠算仝上仝上仝上仝上
地理一〇本邦国勢ノ大要仝上仝上仝上仝上
歴史一〇国体ノ大要仝上仝上仝上仝上
理科一〇理科一般ノ大要仝上仝上仝上仝上
職業七五農業ノ大要仝上仝上仝上仝上
二五
家事裁縫二〇〇家事ノ大要、裁縫ノ一般仝上仝上
体操三〇体操教練遊戯仝上仝上
二四〇仝上仝上仝上仝上
三四〇

第四号表
学科課程時数第一年
学科課程
修公二五道徳ノ要旨公民ノ心得
教練五〇教練陣中勤務其ノ他
普通学科国語一五普通文ノ読解作文
数学一〇筆算 珠算
地理一〇外国地理大要
歴史一〇世界ノ大勢
理科一〇理科一般ノ大要
職業三〇農業大意
一〇
家事裁縫一六〇裁縫家事一般
体操三〇体操遊戯教練
一八〇
二八〇

第一号様式
      入学願
私儀御校 科第部第 年ニ入学致度候ニ付
御許可相成度履歴ヲ具シ保護者(又ハ雇傭者)
連署ヲ以テ此段相願候也
     本籍地
     現住所
       職業 何某何
             氏名
                生年月日
         右 保護者(雇傭主)何某印
 栃木県那須郡湯津上村青年学校長  殿
 
      履歴
一、昭和 年 月 日 何郡市町村何々小学校卒業
            (何科何年修業)
一、自昭和 年 月 日
            何々勤務
  至昭和 年 月 日

第二号様式


第三号様式