農業を営む村民が大半を占める本村においては、市部における地域社会の現状に比して近隣との親睦、相互扶助等の生活関係の面については、結びつきが強く伝統に根ざした「むら」としての慣習が現在も生き続けている。しかし、近年における交通機関の発達、とくにモータリゼーションの進展により個人の生活圏が拡大し、本村の自動車保有率も一世帯一、二台となり、重要な足として欠かせない現状にある。その他テレビ、電話、流通機構等がめざましく普及発達し、村民全体の生産、取引、通勤、通学、娯楽などの生活圏拡大をもたらしている。必然的にマイホーム主義、新しい家族制度としての核家族化、若年層の家庭からの離脱など、近隣の相互依存を稀薄にしている。兼業出稼ぎ農家の急増、第三次産業就労者の増加は、農村の構造を変化させ、また、生産構造の発展的変化が都会の社会関係にも似た状態をつくりつつある。本村の地域共同体の現状は、一方で農業によって古いつながりを保ちつつ、不必要で不合理な慣習的束縛から解放されてきている状態である。