西園寺公望書簡(貴族院批判の件など)

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那覇よりの電信接手
東宮殿下御はじめ皆無事云々雀躍不啻候われ事まづ小康を維持候御安心を乞ふ
其後政海の真相はいまだわかり不申候過日清崟太郎の話しニ山本犬養伊東などが新元老を作るニ尽力し居れりと又或人の報告には此度重大事件云々には大分ニ金が出たり其出処ハ意外なる方向ニ在と其他耳ニする処あれども実際の処ハ猶不明なり
貴族院例ニよりて愚を極めたる質問のみくりかへし昨今ニいたり一種愚劣なる思想を煽動せり所謂上院の縦断説も実現ニいたる事ハ遠きニあらざるべしと考ふ
此地の知事関屋貞三郎宮内次官となる可なり常識もある人のやう見受たり是迄のやり方なれば到底任が重すぎるやう思ふ
高橋氏の電話ニより戸田へ礼状をいだせり戸田より返書来り更ニ又彼より来書にて那覇より受信せりと報じ来りわれよりも亦其返書を出せり赤星へも礼書をいだし置たり
伊藤公爵来り家族を纏めて帰京すと云ふ並ニ例之末松家との一件も段落つきたりとて礼意を述てかへれり
諸事御注意を祈候印度洋航行ハ羨しく存候色々申遣し度候得共後便譲り候閣筆
     三月十一日 興津にて 望
    八郎殿へ
     供奉諸彦へ可然御伝言を煩し候也