東宮殿下御初め一統無事航海云々伝聞何喜如之われ事暖気ニなるニ従ひ意外ニよくなり候御安心可被下候◯過日赤星氏公一二郎同伴来訪なり皆々非常健康なり伊勢参宮より京都大磯一遊なり勿論数日前已ニ帰京なり愛子春子試験第一にて通過なり園子も第一優等にて卒業なり是又御安心◯過日松平慶民来訪如例色々心配のやうす感心いたし候山公にも面会せしが何も談らずと申いたりわれ事其後引続て興津ニあり何事もわからず新聞紙の記事ハ其方にても閲読と存候ニ付不贅于此◯われ事明日より京都ニ一遊二三週の後暫時東京へかへり又々興津へ来る企也東京にて聞込候事も候はゞ通信いたすべく候右ハ無事の報告までなり草々
四月十二日 父より
八郎殿へ
昨日ハ近衛文麿加藤恒忠亀井陸良来訪共ニ晩餐いたし一昨年の巴里の事など物がたりいたし候貴族院の愚劣談も有之候