原本で見る
供御笑覧
其中処々に継き張りの跡あるは書損のケ所ニ候
関直彦拝
西園寺公爵閣下
八千代公園記
伊香保の地高広にして水清く雲霧を履み雷霆を駆り千里能く俯瞰すへく万古神人相契るに堪へたり此地温泉を開くこと天正年間に剏まれり近時に至り屋宇衢を為し浴客遊子日に逾多し故従五位勲四等小暮武太夫翁ハ其郷人なり此地の発展翁に負ふ所多く翁亦地方の開益を以て自任る曽て衆議院議員在職中満洲に遊ひ聞見する所を持て帰り来て新に地を購ひ三万坪を得て新伊香保の一区を劃し客舎二十棟を其中に建て避暑の客を迓へ森林八千八百坪を開放して園囿を造り名けて八千代公園といふ橋を架して清湍渡るへく池に堪へて魚鮮親むべし天下の勝景加ふるに迂叟の工を以てし仙境覚にす人をして神往かしめむとす 朝廷其功を旌して藍綬褒章を下賜せらる嘻此公園や爽早芝を踏て到るに宜く静夜星を数へて逍徉すへし亦皆小暮翁の寄与する処なり陶庵老公の題額已に成るの故を以て記識を予に促す予夙に此地を愛尚し暇あらは即ち来り遊ふ曩に翁自ら委嘱する処あり今更らに嗣君の徴求に値ひ舞すへき罔し乃ち之か記を為る
昭和二年八月 従二位勲一等伯爵牧野伸顕撰
貴族院議員勲二等関直彦書