昭和五〇年一月むつき集 誰の決めたる(二〇首/一六首野分の章)
またたかぬ街の灯を霧の底に埋め十二階なるこの夜の眠り
耳たぶのかすかにほてり眠りゆく聞きたきことのなほある如く
糸を引き合ひブロックの高さ決めてゆく少年工二人むつまじく見ゆ
たまひたる花束(コサージ)のすみれ手にかこみ幾たびも嗅ぐバスを待ちつつ
昭和五〇年二月 (無題) (七首/六首野分の章)
植ゑ呉れし人も来ずなりはじめての花低く咲く螢石蕗に
昭和五〇年三月 (無題)(七首/野分の章)
昭和五〇年四月八重桜集 (無題)(七首/野分の章)
昭和五〇年五月 (無題)(七首/野分の章)
昭和五〇年六月桜桃集 風の坂(七首/六首野分の章)
檜葉垣の秀の黄に萌えてゆらぐさま硝子戸ごしに花の如しも
昭和五〇年一一月 (無題) (七首/野分の章)
昭和五〇年一二月 (無題) (七首/野分の章)