『やまと』

昭和一九年八月 (無題)一首
 うとまれて虚無に翳れる白き手も夕べはあはれ紅をはくかも
 
昭和一九年一一月 (無題)四首
 はまなすの花も吹かるゝ潮風にゆれやすかるはこゝろなりけり
 ひなげしの花のほぐれて落つるさま見つゝ思ひに堪へてわがをり
 落莫のわがゐまはりや花ざくろ濃きくれなゐもなぐさまなくに
 そこはかとこゝろのまはりかたづけて靜かなる日や合歡の花散る