昭和五〇年三月 何のはずみに一〇首(九首/野分の章)
口紅を塗りたるままに死にたしと何のはずみに思ふこの朝
昭和五〇年八月 雨の坂五〇首(野分の章)
昭和五一年三月 かすかなる飢ゑ七首(五首/野分の章)
舌に残る藥の味をそのままに眠らむとして身の浮きあがる
まだ何か間にあふこともあるならむみな星型に百合は花咲く
昭和五二年三月 もろともに一〇首(野分の章)
昭和五二年七月 をんなの手三〇首(野分の章)
昭和五三年三月 負ひ目なるべし七首(野分の章)
昭和五四年三月 鏡一枚七首(風水)
昭和五四年七月 あけくれ三〇首(風水)
昭和五五年三月 突起三首(風水)
昭和五六年一月 まだらなす七首(風水)
昭和五六年三月 不意のみぞれ七首(風水)
昭和五七年一月 今に迷ひて七首(四首/印度の果実)
昭和五七年三月 春寒のころ七首(四首/印度の果実)
こもごもに小さき鈴か鳴るごとし木洩れ陽ゆるる林の道は
馴るるともさびしきものを子はゐずや親はいづこと今日も問はるる
帰り来て手を洗ふとき何により傷めし指とも分かず疼けり
昭和五八年一月 冬の会話七首(印度の果実)
昭和五八年三月 よしなき耳七首(印度の果実)
昭和五八年八月 花ひしめけり一四首(印度の果実)
昭和五九年一月 雨の記憶七首(印度の果実)
昭和五九年三月 わが名七首(印度の果実)