『大宮文芸』

昭和五五年一一月三日 なべて終れる(一〇首/風水)
 
昭和五六年一一月三日 自画像(一〇首/風水)
 
昭和五七年一一月三日 人形のこゑ一〇首(五首/印度の果実・三首/形成・一首/埼玉風景)
 荷となるを恐れて置ける土の鈴ことばやさしき人に買はれよ
 
昭和五九年一一月三日 歳月五首/印度の果実
 
昭和六〇年一一月三日 絵本の海一〇首(形成五首・ぼあ二首・郵政二首)
 街上にあふれてゐたる歩行者のいづこに失せていま星月夜
 
昭和六一年一一月三日 春深みたり一〇首(六首/短歌研究)
 白も黄もつぼみもたげて四季咲きの薔薇といへども春のいきほひ
 おのづから体避けつつ撒く水の裏返るさま見て通りきぬ
 吊り革を握る右手の長袖の肘より先の重たき日なり
 駅名がアナウンスされて反射的に座席を立ちし少年のをり
 
昭和六二年一一月三日 地底の音一〇首(八首/風の曼陀羅)
 わがめぐり目に見えて荒れてゆく日あり供華の黄菊は葉から衰ふ
 ゆく末をまた見失ふごとき日に軒を鳴らして狐雨降る
 
平成元年一一月三日 落ち葉籠(一〇首/風の曼陀羅)
 
平成三年一一月三日 光の粒(一〇首/風の曼陀羅)
 
平成四年一一月三日 牧歌一〇首(九首/光たばねて・一首/形成平四・九)
 
平成五年一一月三日 銀の箔一〇首(八首/光たばねて・二首/形成平五・五)