『暗』

 北九州通信
 
昭和五八年秋季 糸として五首
 背を割りて脱け出づるにもあらねども息詰まる如し木々騒ぐ夜は
 夜を渡る雷のはげしさ銅像の馬は濡れつつ輝きてゐむ
 糸としてかへりみるときよぢれつつ色を乱しし若かりし日よ
 まんさくの花咲きゐたり夢なれば恨みがましきことも言ひつる
 うつつなき思ひにゐしが深爪の疼く小指に引き戻されぬ