『短歌公論』

昭和四三年一〇月 青きたてもの(三首/一首花溢れゐき)
 葉脈のやうに途切れてしまふ日々閉館を告ぐチャイムがひびく
 いづくまで行くわれならむ夢の中の水族館は青きたてもの
 
昭和四三年一一月 しろがねの雨(八首/花溢れゐき)
 
昭和四七年一月 ギヤマンの花(五首/雲の地図)
 
昭和四九年一月 のちの思ひに(五首/雲の地図)
 
昭和五〇年八月 夏の落ち葉(五首/野分の章)
 
昭和五二年一月 春の雪(五首/野分の章)
 
昭和五五年一月 冬の雲(三首/風水)
 
昭和五六年一月 まだまだらなる(三首/風水)
 
昭和五九年一月 ひと世かけて(三首)
 チーズ切りしナイフの曇りをそのままに迷ひ出づればとめどもあらぬ
 ひと世かけて知られずにすむことあらむ逝きにし人はものを言はざる
 夢にさへ来ぬはなにゆゑ夕べよりよひにいちづにありし思ひよ
 
昭和六〇年一月 煉瓦にひびく(三首)
 戻り得ぬ予感の如き不意にして鍵さす音の煉瓦にひびく
 思はざる枷のごとしよ地の上をホース這ひゐてのたうつ見れば
 シンナーの匂ひと思ひ振り返り赤くなだるる夕雲を見つ
 
昭和六一年一月 野火の報い(三首/形成昭和六〇年一月二首・七月一首)
 
平成元年二月 無題(二首/風の曼陀羅)
 
平成元年一一月 夜櫻を見む(七首/風の曼陀羅)
 
平成三年五月 (二首)
 
 不明 晩夏日々
 息絶えてしばしがほどはしづかなる時が流れむこの部屋のなか