『文芸埼玉』

昭和四三年一一月三日創刊 鳥となりても一〇首(九首/花溢れゐき)
 蛇いちご花黄に湧ける野を行きてともなへる人を俄かに怖る
 
昭和四四年一一月三日 ひとすぢの縄一〇首(九首/花溢れゐき)
 仰ぎ見るステンドグラス使徒の手のトパーズ色の部分輝く
 
昭和四五年一一月三日 人のこゑ一〇首(花溢れゐき)
 
昭和四八年三月三一日 力湧き来よ一〇首(雲の地図)
 
昭和四九年一一月三〇日 木槿は白から五首(一首/野分の章)
 童話のやうなやさしき会話して醒めてあたたかかりし子山羊もをらず
 黒板に字を書く背後ひそまりて石の顔など並ぶならずや
 はなやかに角をひらける鹿の絵にゑがきし人のかなしみは見ゆ
 ガラス窓の模様を白く光らせてなつも終りと思ふ雨降る
 
昭和五四年三月三一日 馬の数のみ一〇首(風水)
 
昭和六二年一二月 薬草園一〇首(風の曼陀羅)
 
平成五年一二月一七日 冬の桜一〇首(三首/光たばねて・七首/形成平成四年一〇月~五年四月)