『抒情文芸』

昭和五八年春季号五月一日第二六号 等圧線八首(四首/印度の果実)
 どのやうな会話のあとか少女二人声なく坂をくだりてゆけり
 山茶花の垣に沿ひ来て山茶花の花の匂ひにとりかこまれぬ
 杉の秀を渡る風あり薪能を共に見し夜も星は冴えゐき
 雪雷のありし伝へて能登よりの夜の電話は短く切れぬ