『短歌ジャーナル』

昭和六一年七月 転生の鳩五首
 転生の鳩かと思ふ楡の木を去りやらずゐて鳴けるを見れば
 ふるさととおぼしき坂を登りゐて転びしは母ともわれとも知れず
 狐火の噂も絶えて村あらむ闇濃くなれり四月の夜は
 いづこより来りし子らか自転車を乗り捨てて野蒜を摘み始めたり
 ゆるゆると春の満月ふるさとに老いて残れるはらからも無し