あらしのあとあきふかむ 神無月三の日

夏頃ゆ傍(かた)へに愛(を)しみしガーベラの花の赤きもそぐはずなりぬ
菊活けてこゝに集へる友どちの寒き想ひはよも知らじこの宵
君恋へる想ひはるかになりまさり胸吹きぬけて秋の風吹く
すやきの瓶(へい)に二本(ふたもと)み本白菊のかほりゆかしくなりまさる日々
つやゝかに母にみがゝれ紅(べに)りんご北の海辺ゆ送られてきぬ
くれなゐのつめたき実なりほゝよせてしばしもの思(も)ひ灯もさゝずゐし
灯ともればあはれ真紅(まあか)くかゞやきぬ故里(さと)のかたなし何を思(も)へとや
海霧のかの背戸にしるくなりまさりみ冬たつ日々はゝよまさきくませや
わがはゝの想ひはるかに紅き実のそのめでたきを君にすゝめん
かくて過ぐる日々に聲なくむすぼるゝ思ひをほぐすよしもなきかな