天長節の日 うらぶれありきて詠める

君をおきあぐね行きゆく新道のかたへの庭にふぢの花咲く
散り残るあせびの花を尋(と)めゆけば雨はれてあした若葉もえて美はし
雲きれてますみの碧さ見えそめぬ物思ひする子をなだむかに
たえがたく思ひあぶれて来し吾を旺もいだくか天地の春
い寝がたく思(も)ひ極まりてこのあしたあぶれ来し野に楓若葉燃ゆ
物音にうち驚きてみかへれば雨後の若葉を鹿の食(は)む音(ね)か
おだやかに雨を湛ふる猿澤の池のほとりにさをしかのむれ
君と離(さか)りてたえがたくあれど野をゆけば光のさ中に吾も生きてあるかな