吉野路の旅

いつくしむはらからよ父よ吉野路の旅夜(よ)切なく故郷(さと)恋へる子を
生くるとふ名のみ甲斐なき切なさに又も幼なく死を欲(ほ)っする
あは/\と霧はふ谷合ひ峯の松あな絵のごとよと濡れつゝ行きし
吉野山花に浮かるゝ人混みのさ中に君といさかひもしき
後の日に偲び返さんよすがなるみ寺みやしろ御朱印の数
ふる雨に散らふ桜の翳深く塔尾(とをの)山もとみさゝぎの森