薬師寺懐古

薬師寺にかよふ道べにひるたけてつまくれなゐの花は咲くなり
薬師寺やまみうるましてくらがりに名ぐはしほとけひとりおはすなり
かなしきは吾のこゝろかや聖観音(しゃうかんのん)眸(まみ)うるましてありたゝすなり
西京や唐招提のおん寺にいと伸びやかに紫苑咲くなり
古き世のみほとけどちにかくまはれ今日のひと日は倖せなりけり
 
            十八年九月の歌稿
 
            神無月三の日
                 上梓す