老いらくの母に謝する歌

貧しさに吾娘(あこ)に病まれて日を経たるはゝはしみじみ老いたまひけり
愛隣の思ひ烈しき極まりにはゝは泣きつゝ娘(こ)をなじるなり
はゝそはになじられにつゝ目を伏せて南無観音ふと吾は祈りき
死にまさる不幸は無けん生きては又老い母を泣かす吾は罪の子
幾たりに愛されて吾や身一つを去就に惑ひ命乱しつ
哀歓と愛憎を織りてわが生くる夢なりがたき淋しさを君よ