その頃1

激し来る身を押し沈めたん/\と語りあひつゝ淋しかりにき
泣かざりし駅の別れはたん/\と粉雪の中に君を残しぬ
身と魂と相添ひがたき知識人の悲しさはつひに果つる日なきや
さめぎはの悪夢脳裏にまつはりてわびしき思ひひる前は持つ
野の果てに摘みのこされて枯れるべき花の命や今咲きさかる
たよらるゝ君はいかなる夫ならむ遠き境にゆくこゝちする
君のもすたばこのかたはらににほはぬ幾ひすぎてさぶしも
かくてたどる道のはたてには野か山かはかられなくに君に添ひゆく
道の果てにともしび一つ見ゆる故君のひとみも光るならむか