羈旅2

淋しさに千代紙などをとりいだし一人遊ぶらむ妹(いも)の恋ひ
母とるは二人淋しくわがことを語りあひつゝ寝むとはすらん
下枝にほの咲く花も卑下を捨てゝ真陽に向ひて咲き誇るべし    歌と随筆二四・六
花車ひきて賑はふ七夕の祭りもむなしつま恋ふる
憤怒してゆがむ面輪はみにくきと思ひつゝ母を見てゐし
胸をさすきびし言葉も受けとめて君によるべく吾は哭く
ものなべてひづむ世なれば疑ひて肉親さへもうとくなりつゝ