死産挽歌

激痛の呻きのまにも期して待つうぶごゑは無し遂に無かりき    歌と随筆二四・六
夫に似し吾児逝かしめてぽつ然と吾にめざめし母性ぞあはれ    歌と随筆二四・六
若き父がひそかに吾児にだかせやる赤き人形も吾を泣かしむ    歌と随筆二四・六
相ともに生きがたかりし宿業に母を地上におきて逝きしか    歌と随筆二四・六
現し世の乳の香一つ吸はずして寂しからずや吾児のくちびる    歌と随筆二四・六
さびさびと墓山みちをゆくならむ吾児の柩に雪よかかるな    歌と随筆二四・六
白衣着て淺く埋もれて墓山の吾児寒からむと今宵寝らえず    歌と随筆二四・六
うつし世にこよなく寂き山路を吾児とゆくらむのべ送る背に
父と母の夢なり難き現し世を超えて吾児は天がけりしか    歌と随筆二四・六
悔多き一年のたつきふみこえて相寄る春の待ち遠きかも