平板の土地ゆゑ何の風情無し災害も無しと顔を見合はす
へだたりて語りてをれば香水を変へたることの人に知られず
隔ててはまた結びては谷あひに幾つも架かる橋ありにけり
別のことを思へるまにも背後にてレンジはゆるく回りてをりぬ
ペット病院を出で来し人は自転車の荷台に大き犬をのせたり
紅花長者の屋敷跡とぞたかむらの奥深く灯の点れるを見てゐつ
紅花長者の屋敷といへり住む人のありなし知れず囲はれて
蛇に会ひし昂りもときのまに過ぎていつものゆるき足どりとなる
変声期の少年とゐたる日もなしと前行く声を聞きつつ思ふ
遍路道両側の軒に大根の干しあるを見つつ札所への坂