たゞ淋し月の青さに惑ふごと眞白き野路に迷ひ出でけり
月青き雪の野路も彼のの時は君も野山も青葉にて阿り志
移り行き今は追憶の語り草幸なりし時の野路の月かも
若しやとのはかなくつなぐ一すぢの糸さへ絶えて君は来まさず
夢に見志甘き言葉を繰返し繰返しつゝ聞く一時の音
この町に君をはせしと知り乍ら虚しく歩む恋のかなしさ
雪荒む町の小みちに笑みかけし想ひ出の人の瞳忘れず
今日も又吹雪に明けて暮れ行きぬ雨戸を叩く音の侘びしさ
鳥行けり静かに白く羽搏きて夕べ小暗き原の彼方に
何一つ嬉しきこ○○に手もふれず聞くこともなく今日も暮れゆく
夏の夜に甘き夢見て君と吾仰ぎし空に星の凍てつく
秋は逝きこの寒さかな夏の夜の甘き薫りは昨日のごと想へ○○
さめ/゛\と床の中にて咽むこと日課の如くなりしこの頃
毎夜ごと學び終へては文机にさめ/゛\泣ける宿命なるかな
幾度か都の君に音信るれど文帰り来ず時も逝きけり
悪しき噂一日にして拡ごりて吾が不良なる故は悲しき
友が心移り行くのも宿命の神の御旨に副ひて行くらむ