波紋


00063
學問する程女は不幸になるといふ論に反撥しつつ寂しくなりぬ
ガクモンスルホド オンナハフコウニナルト イフロンニ ハンパツシツツ サビシクナリヌ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.25
【初出】 『形成』 1955.9 経緯 (3)


00064
傷つけ合ふを避けて歸らむ弧獨の深みにて吐くかたみの言葉
キズツケアフヲ サケテカエラム コドクノ フカミニテハク カタミノコトバ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.25
【初出】 『形成』 1955.9 経緯 (4)


00065
退職金にて託兒所を營まむと口癖に言ひゐしゆとり今の君にはなし
タイショクキンニテ タクジショヲイトナムト クチグセニ イヒヰシユトリ イマノキミニハナシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.26
【初出】 『形成』 1955.4 残夢 (6)


00066
敎育功勞者の表彰受けし日の君を思ひ出でつつひとり寂しむ
キョウイクコウロウシャノ ヒョウショウウケシ ヒノキミヲ オモイイデツツ ヒトリサビシム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956.4) p.26
【初出】 『形成』 1955.4 残夢 (7)


00067
性別にて差をつけし辭職の勸告には屈し給ふなと勵して別る
セイベツニテ サヲツケシジショクノ カンコクニハ クッシタマフナト ハゲマシテワカル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.26
【初出】 『形成』 1955.4 残夢 (8)


00068
思ひまうけぬ懀惡の語聞き來し今日の會何の信號か遠き視界に光る
オモヒマウケヌ ゾウオノゴ キキコシキョウノカイ ナンノシンゴウカ トオキシカイニ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.27
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (10)


00069
思はせぶりの言葉なりしをまた思ふ起き上りて灯を消せる時より
オモハセブリノ コトバナリシヲ マタオモフ オキアガリテ ヒヲケセルトキヨリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.27
【初出】 『形成』 1953.12 現実 (8)


00070
跪きて沙漠に祈るターバンの群の一人たりしが汗ばみてめざむ
ヒザマズキテ サバクニイノル ターバンノ ムレノヒトリタリシガ アセバミテメザム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.27
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (11)