村落


00139
靑年演劇グループ公演の取材終へ歸り來て冷えし飯を嚙みしむ
セイネンエンゲキ グループコウエンノ シュザイオヘ カエリキテヒエシ イヒヲカミシム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.55
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (7)


00140
期末の仕事にたれも疲れてゆく日々に言葉やさしきわれと思へり
キマツノシゴトニ タレモツカレテ ユクヒビニ コトバヤサシキ ワレトオモヘリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.55
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (8)


00141
校正刷りの屆くを待ちて夜となりぬ手傳はむと言ふ少女と煉炭に寄る
コウセイズリノ トドクヲマチテ ヨトナリヌ テツダハムトイフショウジョト レンタンニヨル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.56
【初出】 『形成』 1955.3 夜の落葉 (9)


00142
わが編輯の緻密を人のほめしとぞ仕事にうちこむ外なき身と知らず
ワガヘンシュウノ チミツヲヒトノ ホメシトゾ シゴトニウチコムホカ ナキミトシラズ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.56
【初出】 『形成』 1955.6 風聞 (1)


00143
母を探して事務所に來し友の幼な子を坐らせてセーターのほつれ縫ひやる
ハハヲサガシテ ジムショニコシトモノ オサナゴヲ スワラセテセーターノ ホツレヌヒヤル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.56
【初出】 『形成』 1955.6 風聞 (10)


00144
農閑期狙ふ講座の日も迫り人寄せに寫さむ幻燈のスライドを選る
ノウカンキネラフ コウザノヒモセマリ ヒトヨセニ ウツサムゲントウノ スライドヲエル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.57
【初出】 『形成』 1954.12 村落 (1)


00145
淺草文化になづみ易き土地の條件を歎く若き農夫の聲胸を打つ
アサクサブンカニ ナヅミヤスキトチノ ジョウケンヲ ナゲクワカキノウフノ コエムネヲウツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.57
【初出】 『形成』 1954.12 村落 (4)


00146
機械力を藉りて耕すまでもなき狹き農土と言ふ聲も聞く
キカイリョクヲ カリテタガヤス マデモナキ セマキノウドト イフコエモキク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.57


00147
文化は育たぬと言はれ來し地區にコーラスの會生れしを告ぐる乙女あり
ブンカハソダタヌト イハレコシチクニ コーラスノ カイウマレシヲ ツグルオトメアリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.58
【初出】 『形成』 1954.12 村落 (5)


00148
農業も年に一度の賭博ぞと言ふ聞けば恃みがたくなりゆく
ノウギョウモ ネンニイチドノ トバクゾト イフキケバタノミ ガタクナリユク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.58


00149
とり繕ひつつ報告書書く夜の事務所集り惡き會を終へ來て
トリツクロイツツ ホウコクショカク ヨノジムショ アツマリワルキ カイヲオヘキテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.58
【初出】 『形成』 1954.1 周辺 (9)