遠きふるさと


00170
裏山にわらび萌えゐむ故郷を勤めに出づる朝々に戀ふ
ウラヤマニ ワラビモエヰム フルサトヲ ツトメニイヅル アサアサニコフ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.67
【初出】 『形成』 1955.7 起伏 (1)


00171
母校の敎師となるを拒みて歸らざりしかの若き日より遠きふるさと
ボコウノキョウシト ナルヲコバミテ カエラザリシ カノワカキヒヨリ トオキフルサト

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.67
【初出】 『短歌』 1954.11 古き樂譜 (11)


00172
敎員たりし遠き記憶に生徒らも圖書室のミロのヴィナスもやさし
キョウインタリシ トオキキオクニ セイトラモ トショシツノミロノ ヴィナスモヤサシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.68
【初出】 『形成』 1955.1 微雨 (2)


00173
日本列島の地理的優位など生徒らに説きにし日あり償ひがたし
ニホンレットウノ チリテキユウイナド セイトラニ トキニシヒアリ ツグナヒガタシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.68
【初出】 『形成』 1955.1 微雨 (3)


00174
敎へ子の嫁ぐとふ便り舊家などに安住し得ぬ性と思ふに
オシヘゴノ トツグトフタヨリ キュウカナドニ アンジュウシエヌ サガトオモフニ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.68
【初出】 『形成』 1954.11 教職 (2)