目次
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全短歌(歌集等)
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まぼろしの椅子
夜の靄
幼な子を
ねぎらはれ
あと一年は
防水液は
未亡人の
ユモレスクの
迂曲しつつ
背高き
00192
幼な子を背に攀ぢさせてなごみいましきまかり來て心深くぬくもる
オサナゴヲ セニヨジサセテ ナゴミイマシキ マカリキテココロ フカクヌクモル
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.76
【初出】
『形成』 1954.11 教職 (7)
00193
ねぎらはれゐたるを思ふ別れ來て夜の靄にまぎるる如く歩めり
ネギラハレ ヰタルヲオモフ ワカレキテ ヨノモヤニマギルル ゴトクアユメリ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.76
【初出】
『形成』 1955.5 春寒 (8)
00194
あと一年は着ねばならぬコート窓に吊り防水液を吹きつけてゆく
アトイチネンハ キネバナラヌコート マドニツリ ボウスイエキヲ フキツケテユク
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.77
【初出】
『短歌』 1954.11 古き樂譜 (3)
00195
防水液は塗るかたへより乾きゆく縞のパラソル廻しつつ塗る
ボウスイエキハ ヌルカタヘヨリ カワキユク シマノパラソル マワシツツヌル
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.77
00196
未亡人の姉妹が住む隣りの部屋今朝は髪洗ひなごめるらしも
ミボウジンノ シマイガスム トナリノヘヤ ケサハカミアラヒ ナゴメルラシモ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.77
【初出】
『形成』 1955.4 残夢 (3)
00197
ユモレスクのふし吟み階くだる逢はば苦しむわれと思ふに
ユモレスクノ フシクチズサミ カイクダル アハバクルシム ワレトオモフニ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.78
【初出】
『形成』 1955.4 残夢 (1)
00198
迂曲しつつ生くる身と思ひ歩めるにキャメラマンが肩聳して過ぐ
ウキョクシツツ イクルミトオモヒ アユメルニ キャメラマンガカタ ソビヤカシテスグ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.78
【初出】
『形成』 1955.5 春寒 (9)
00199
背高き妹に似合ふや縫ひ終へし水色のドレスをたたみ眠らむ
セイタカキ イモウトニニアフヤ ヌヒオヘシ ミズイロノドレスヲ タタミネムラム
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.78
【初出】
『形成』 1954.8 余波 (10)