過程


00218
憎むより祈り續け來し日々も虚し頬とがり君の歩みゐしとぞ
ニクムヨリ イノリツヅケコシ ヒビモムナシ ホオトガリキミノ アユミヰシトゾ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.86
【初出】 『短歌』 1954.11 古き樂譜 (1)


00219
強ひて忘れむと今は思はず君が工學の書籍も未だ積めるわが部屋
シヒテワスレムト イマハオモハズキミガ コウガクノ ショセキモイマダ ツメルワガヘヤ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.86
【初出】 『短歌』 1954.11 古き樂譜 (2)


00220
わが夢に來るきれぎれの像をつなぐ錯亂は深く胸にきざすや
ワガユメニ クルキレギレノ ゾウヲツナグ サクランハフカク ムネニキザスヤ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.87
【初出】 『短歌』 1954.11 古き樂譜 (5)


00221
梗概のみを追ふ人の中に胸深く愛の推移を秘めつつ勤む
コウガイノミヲ オフヒトノナカニ ムネフカク アイノスイイヲ ヒメツツツトム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.87
【初出】 『短歌』 1954.11 古き樂譜 (7)


00222
疑ふは卑しきことと決めてゐてひそやかなりき不幸となりし過程も
ウタガフハ イヤシキコトト キメテヰテ ヒソヤカナリキフコウト ナリシカテイモ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.87
【初出】 『短歌』 1954.11 古き樂譜 (13)


00223
まどゐ得よと母が持たせくれし長火鉢獨りとなりし部屋に位置占む
マドヰエヨト ハハガモタセクレシ ナガヒバチ ヒトリトナリシ ヘヤニイチシム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.88
【初出】 『形成』 1955.1 微雨 (6)


00224
さまざまに干渉されつつ結ばれゆく君らにあたたかくあらむと思ふ
サマザマニ カンショウサレツツ ムスバレユク キミラニアタタカク アラムトオモフ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.88
【初出】 『短歌』 1954.11 古き樂譜 (6)


00225
窓の下にいつまでも囁き交はす聲世界隔ててわれは眠らむ
マドノシタニ イツマデモササヤキ カハスコエ セカイヘダテテ ワレハネムラム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.88
【初出】 『形成』 1954.11 教職 (8)