目次
/
全短歌(歌集等)
/
まぼろしの椅子
父の忌
果たし得ざりし
妹と
「美田は買はず」
檢察官として
三十年間の
夜更かして
00251
果たし得ざりし學問を汝こそ遂げよとぞ言ひ遺せる父の忌はまためぐり來ぬ
ハタシエザリシ ガクモンヲナコソ トゲヨトゾ イヒノコセルチチノキハ マタメグリキヌ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.99
00252
妹と母の待ちゐむ父の忌に菜の花あまた買ひて歸らむ
イモウトト ハハノマチヰム チチノキニ ナノハナアマタ カヒテカエラム
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.99
【初出】
『形成』 1955.4 残夢 (12)
00253
「美田は買はず」と言ひて遊學させくれし父を思ふ今宵の忌に歸り來て
ビデンハカハズ トイヒテユウガク サセクレシ チチヲオモフコヨイノ キニカエリキテ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.100
00254
檢察官として苦しみし父か資本主義の矛盾が犯罪を生むことも子には説きにき
ケンサツカントシテ クルシミシチチカ シホンシュギノ ムジュンガハンザイヲウムコトモ コニハトキニキ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.100
00255
三十年間の捜査記録綴らむ餘生を父は樂しみゐしが俄かに逝きぬ
サンジュウネンカンノ ソウサキロクツヅラム ヨセイヲチチハ タノシミヰシガ ニワカニユキヌ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.100
00256
夜更かして語り盡きずシャーロック・ホームズと謳はれつつ貧しかりし父の思ひ出
ヨフカシテ カタリツキズシャーロック ホームズト ウタハレツツマズシカリシ チチノオモヒデ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.101