目次
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全短歌(歌集等)
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まぼろしの椅子
推移
抗はず
被害妄想と
夜に入りて
用心深く
踏切りの
女歌手の
厭世的に
醉ひて遲く
00376
抗はず無氣力になりてゆくわれを進歩とみなす一人か君も
アラガハズ ムキリョクニナリテ ユクワレヲ シンポトミナス ヒトリカキミモ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.148
【初出】
『朱扇』 1953.3/4 冬の日 (5)
00377
被害妄想と片附けられて立ちて來つ夫にもわれは理解されざる
ヒガイモウソウト カタヅケラレテ タチテキツ ツマニモワレハ リカイサレザル
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.148
【初出】
『朱扇』 1953.3/4 冬の日 (4)
00378
夜に入りていらだてる君は本棚の位置など變へて見むとするらし
ヨニイリテ イラダテルキミハ ホンダナノ イチナドカヘテ ミムトスルラシ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.149
【初出】
『朱扇』 1951.11 日照り雨 (6)
00379
用心深く言葉少なに振舞へば嫁の位置にも堪へ得るごとし
ヨウジンブカク コトバスクナニ フルマヘバ ヨメノイチニモ タヘウルゴトシ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.149
【初出】
『朱扇』 1951.11 日照り雨 (2)
00380
踏切りのつかぬままに漸く保ちゐる平安か毛糸編みつつ寂し
フンギリノ ツカヌママニヨウヤク タモチヰル ヘイアンカケイト アミツツサビシ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.149
【初出】
『朱扇』 1953.3/4 冬の日 (6)
00381
女歌手の手をのべて歌ふブルースに何のはずみか涙こぼれつ
オンナカシュノ テヲノベテウタフ ブルースニ ナンノハズミカ ナミダコボレツ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.150
【初出】
『朱扇』 1952.7 雨季 (8)
00382
厭世的になりゐるわれと知りながら苦しまぬ夫か今宵も遲し
エンセイテキニ ナリヰルワレト シリナガラ クルシマヌツマカ コヨイモオソシ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.150
【初出】
『朱扇』 1952.4 みぞれの街 (6)
00383
醉ひて遲く歸れる夫の表情の寂しげなれば立ちて寄りゆく
ヨヒテオソク カエレルツマノ ヒョウジョウノ サビシゲナレバ タチテヨリユク
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.150
【初出】
『朱扇』 1951.11 日照り雨 (7)