目次
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全短歌(歌集等)
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まぼろしの椅子
病院にて
明日は明日の
手術後の
自我強く
子らのため
病室の
冬となる日々
集め毛糸の
働きつつ
急に廣場に
00384
明日は明日の風が吹くとふ言葉あり氷嚢を替へつつ涙にじみ來
アスハアスノ カゼガフクトフ コトバアリ ヒョウノウヲカヘツツ ナミダニジミク
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.151
【初出】
『朱扇』 1952.12 病院にて (1)
00385
手術後の眠りにおちし母の顏生えぎはにうすく汗はにじめり
シュジュツゴノ ネムリニオチシ ハハノカオ ハエギハニウスク アセハニジメリ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.151
【初出】
『朱扇』 1952.12 病院にて (2)
00386
自我強く生き來し母よ枕邊に入れ齒をおきて眠り給へり
ジガツヨク イキコシハハヨ マクラベニ イレバヲオキテ ネムリタマヘリ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.152
【初出】
『朱扇』 1952.12 病院にて (3)
00387
子らのため殘し來し財の盡きなむを氣にかけていますことも知りたり
コラノタメ ノコシコシザイノ ツキナムヲ キニカケテイマス コトモシリタリ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.152
【初出】
『朱扇』 1952.12 病院にて (4)
00388
病室の窓に今朝啼く百舌の聲を聽かすすべもなし耳病む母に
ビョウシツノ マドニケサナク モズノコエヲ キカススベモナシ ミミヤムハハニ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.152
【初出】
『朱扇』 1952.12 病院にて (5)
00389
冬となる日々ながく病院に通ふべき母のため今宵も脚絆編みつぐ
フユトナルヒビ ナガクビョウインニ カヨフベキ ハハノタメコヨイモ キャハンアミツグ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.153
【初出】
『朱扇』 1952.12 病院にて (6)
00390
集め毛糸の脚絆なれどもはきて見つつ母の眼に光る涙を見たり
アツメケイトノ キャハンナレドモ ハキテミツツ ハハノメニヒカル ナミダヲミタリ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.153
【初出】
『朱扇』 1952.12 病院にて (7)
00391
働きつつ貧しき日々よ棄てばちの生き方のふと美しく見ゆ
ハタラキツツ マズシキヒビヨ ステバチノ イキカタノフト ウツクシクミユ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.153
【初出】
『朱扇』 1952.12 病院にて (8)
00392
急に廣場に出づるが如きことなきか暗く貧しき日々が續くも
キュウニヒロバニ イヅルガゴトキ コトナキカ クラクマズシキ ヒビガツヅクモ
『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.154
【初出】
『朱扇』 1952.12 病院にて (9)