信濃路


00393
聲の限り呼びたきみ名もある如し谷越えて迫る山のなだりよ
コエノカギリ ヨビタキミナモ アルゴトシ タニコエテセマル ヤマノナダリヨ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.155
【初出】 『朱扇』 1951.10 深山路 (1)


00394
今一たび夢を見むとも願はねど追ひつめて寂し遠き日の思慕
イマヒトタビ ユメヲミムトモ ネガハネド オヒツメテサビシ トオキヒノシボ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.155
【初出】 『朱扇』 1952.3 狭山紀行 (4)


00395
胸深く古き牧歌の鳴るごとし暮れゆく原に尾花そよげり
ムネフカク フルキボッカノ ナルゴトシ クレユクハラニ オバナソヨゲリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.156
【初出】 『朱扇』 1953.1 信濃紀行 (4)


00396
時へなば忘れも得べし思ひ出の中にのみ住むおもかげとして
トキヘナバ ワスレモウベシ オモヒデノ ナカニノミスム オモカゲトシテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.156
【初出】 『朱扇』 1952.3 狭山紀行 (5)


00397
いかなる家の建ちゆくならむ道の邊の地鎭めの式に人等集へる
イカナルイエノ タチユクナラム ミチノベノ ヂシズメノシキニ ヒトラツドヘル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.156
【初出】 『朱扇』 1953.1 信濃紀行 (5)


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淺き瀬のさざなみ光る千曲川堤の道を人はゆきかふ
アサキセノ サザナミヒカル チクマガワ ツツミノミチヲ ヒトハユキカフ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.157
【初出】 『朱扇』 1953.1 信濃紀行 (6)


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畑中は籾殻を燒くうすけむり淺間嶺もいつか暮れゆきにけり
ハタナカハ モミガラヲヤク ウスケムリ アサマネモイツカ クレユキニケリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.157
【初出】 『朱扇』 1953.1 信濃紀行 (7)