目次
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全短歌(歌集等)
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不文の掟
まなうらの影
歩みつつ
完きは
たどきなく
その場限りの
橋杭に
足どりの
雨となる
石室の
00487
歩みつつ振り返る視野昏れてゐて海藻のやうに枯れ木がゆらぐ
アユミツツ フリカエルシヤ クレテヰテ カイソウノヤウニ カレキガユラグ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.10
【初出】
『埼玉新聞』 1957.1 草の穂 (1)
00488
完きは一つとてなき阿羅漢のわらわらと起ちあがる夜無きや
マツタキハ ヒトツトテナキ アラカンノ ワラワラトタチ アガルヨナキヤ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.10
【初出】
『形成』 1957.12 危惧 (4)
00489
たどきなく耳を澄ませば身もだえて落葉を急ぐ木々と思ほゆ
タドキナク ミミヲスマセバ ミモダエテ ラクエフヲイソグ キギトオモホユ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.11
【初出】
『形成』 1956.2 火山灰地 (13)
00490
その場限りの言葉と知りつつ囚はるるおろそかにわが応へしことも
ソノバカギリノ コトバトシリツツ トラハルル オロソカニワガ コタヘシコトモ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.11
【初出】
『形成』 1957.7 雨後 (4)
00491
橋杭に堰かれつつ流れゆくばかり河はつくづく海より寂し
ハシグイニ セカレツツナガレ ユクバカリ カワハツクヅク ウミヨリサビシ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.11
【初出】
『形成』 1956.5 落花 (3)
00492
足どりの乱れて歩みゐしわれか追ひ抜きざまに人の振り向く
アシドリノ ミダレテアユミ ヰシワレカ オヒヌキザマニ ヒトノフリムク
『不文の掟』(四季書房 1960) p.12
【初出】
『形成』 1956.12 風前 (2)
00493
雨となる気配に昏れてまなうらに影かさねつつ人のゆきかふ
アメトナル ケハイニクレテ マナウラニ カゲカサネツツ ヒトノユキカフ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.12
【初出】
『形成』 1957.11 月かげ (3)
00494
石室の底に睡りゐしごとし遠きしづくの音に醒めつつ
イシムロノ ソコヒニネムリ ヰシゴトシ トオキシヅクノ オトニサメツツ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.12
【初出】
『短歌』 1958.9 逸れ矢 (7)