目次
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全短歌(歌集等)
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不文の掟
乱反射
夜行バスの
白樺の
少しづつ
残雪の
われを呑まむ
凍るとも
落葉松の
枯れ葦の
00598
夜行バスの窓より見えて星かげと山あひの灯とまたたきかはす
ヤコウバスノ マドヨリミエテ ホシカゲト ヤマアヒノヒト マタタキカハス
『不文の掟』(四季書房 1960) p.53
【初出】
『短歌研究』 1958.1 夕占 (1)
00599
白樺の映れる湖面乱しつつ光る日照雨のたちまちに過ぐ
シラカバノ ウツレルコメン ミダシツツ ヒカルソバエノ タチマチニスグ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.53
【初出】
『形成』 1956.7 雨月 (11)
00600
少しづつずらし来て今の平衡ぞ湖の水の落ちてゆく音
スコシヅツ ズラシキテイマノ ヘイコウゾ ミズウミノミズノ オチテユクオト
『不文の掟』(四季書房 1960) p.54
【初出】
『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (9)
00601
残雪のひらたく占むる窪地あり去年のすすきのうち伏すなかに
ザンセツノ ヒラタクシムル クボチアリ コゾノススキノ ウチフスナカニ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.54
【初出】
『形成』 1956.7 雨月 (10)
00602
われを呑まむ渦かと怖れ見し波紋一瞬にしてあとかたもなし
ワレヲノマム ウズカトオソレ ミシハモン イッシュンニシテ アトカタモナシ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.54
【初出】
『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (8)
00603
凍るとも解くるともなし沢ふかく残れる雪の幾かたまりは
コオルトモ トクルトモナシ サワフカク ノコレルユキノ イクカタマリハ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.55
【初出】
『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (10)
00604
落葉松の芽ぶきの匂ふ夜の風に吹きちぎられてひとり歩めり
カラマツノ メブキノニオフ ヨノカゼニ フキチギラレテ ヒトリアユメリ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.55
【初出】
『形成』 1956.5 落花 (4)
00605
枯れ葦のさやぐ音聴けば乱反射してゐむ夜の水面を恋ふ
カレアシノ サヤグオトキケバ ランハンシャ シテヰムヨルノ スイメンヲコフ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.55
【初出】
『形成』 1956.4 遠景 (3)