花の終り


00606
街にて不意に逢はむ日などを恋ふのみに白木蓮の花も畢りぬ
マチニテフイニ アハムヒナドヲ コフノミニ ハクモクレンノ ハナモヲハリヌ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.56
【初出】 『形成』 1957.7 雨後 (5)


00607
きざし来る猜疑を秘めて書く手紙明るき雨と書きつつ脆し
キザシクル サイギヲヒメテ カクテガミ アカルキアメト カキツツモロシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.56
【初出】 『形成』 1957.7 雨後 (2)


00608
めざましき翻意など身に遠くして白足袋かたくはきしめて出づ
メザマシキ ホンイナドミニ トオクシテ シロタビカタク ハキシメテイヅ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.57
【初出】 『形成』 1957.6 風の中 (1)


00609
妻としての最後の逢ひとならむ夜のよるべなき身を燈下にさらす
ツマトシテノ サイゴノアヒト ナラムヨノ ヨルベナキミヲ トウカニサラス

『不文の掟』(四季書房 1960) p.57
【初出】 『形成』 1957.7 雨後 (3)


00610
蕁麻に触れし痺れの残りゐて脅やかされむまた沼の夢に
イラクサニ フレシシビレノ ノコリヰテ オビヤカサレム マタヌマノユメニ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.57
【初出】 『短歌』 1958.7 夢うら (9)