目次
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全短歌(歌集等)
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不文の掟
片耳の馬
海よりの
手に重き
わかち持つ
小琴弾く
復元を
石を磨りて
少年の
瑠璃いろの
笑ふ埴輪と
風出づる
距れば
00630
海よりの反射まばゆき部屋に醒め晦冥に戻るごとく起き出づ
ウミヨリノ ハンシャマバユキ ヘヤニサメ カイメイニモドル ゴトクオキイヅ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.65
【初出】
『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (1)
00631
手に重き埴輪の馬の耳ひとつ片耳の馬はいづくにをらむ
テニオモキ ハニワノウマノ ミミヒトツ カタミミノウマハ イヅクニヲラム
『不文の掟』(四季書房 1960) p.65
【初出】
『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (2)
00632
わかち持つ遠き憶ひ出あるに似てひそかにゐたり埴輪少女と
ワカチモツ トオキオモヒデ アルニニテ ヒソカニヰタリ ハニワオトメト
『不文の掟』(四季書房 1960) p.66
【初出】
『形成』 1957.1 淡水 (10)
00633
小琴弾く指傷める埴輪据ゑ僅かに楽をよみがへらしむ
ヲゴトヒク オヨビイタメル ハニワスヱ ハツカニガクヲ ヨミガヘラシム
『不文の掟』(四季書房 1960) p.66
【初出】
『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (3)
00634
復元を終へし繩文の坏ささげ古代の酒は充たすよしなし
フクゲンヲ オヘシジョウモンノ ツキササゲ コダイノミキハ ミタスヨシナシ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.66
【初出】
『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (6)
00635
石を磨りて石鏃作りゐし少年らやにはに獣逐ふ真似したり
イシヲスリテ ヤジリツクリヰシ ショウネンラ ヤニハニケモノ オフマネシタリ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.67
【初出】
『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (7)
00636
少年の秘めもつ石鏃出土地を記せるカードの文字もをさなし
ショウネンノ ヒメモツヤジリ シュツドチヲ シルセルカードノ モジモヲサナシ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.67
【初出】
『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (5)
00637
瑠璃いろの勾玉を掌にまろがして裳裾吹かるる思ひにゐしか
ルリイロノ マガタマヲテニ マロガシテ モスソフカルル オモヒニヰシカ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.67
【初出】
『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (4)
00638
笑ふ埴輪と泣く埴輪並びよるべなし不意に窓より海の匂ひす
ワラフハニワト ナクハニワナラビ ヨルベナシ フイニマドヨリ ウミノニオヒス
『不文の掟』(四季書房 1960) p.68
【初出】
『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (8)
00639
風出づる気配に波の秀が耀れば蒐めし貝を措きて起ちゆく
カゼイヅル ケハイニナミノ ホガテレバ アツメシカイヲ オキテタチユク
『不文の掟』(四季書房 1960) p.68
【初出】
『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (9)
00640
距れば性もわかたぬ土偶にてうながす声のもはや聴かれず
ヘダタレバ セイモワカタヌ ドグウニテ ウナガスコエノ モハヤキカレズ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.68
【初出】
『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (10)