亡きあと


00675
陸橋の風にあふられ歩み出づ理由なき死といふ語聴き来て
リッキョウノ カゼニアフラレ アユミイヅ リユウナキシト イフゴキキキテ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.82
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (1)


00676
単作地帯のオルグに赴くとも知らず夜の駅に送りき幾年前ぞ
タンサクチタイノ オルグニオモムク トモシラズ ヨノエキニオクリキ イクトセマエゾ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.82
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (4)


00677
描きさしの自画像裂きてある見ればやすらかなりし死と思ひ得ず
カキサシノ ジガゾウサキテ アルミレバ ヤスラカナリシ シトオモヒエズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.83
【初出】 『短歌』 1958.9 逸れ矢 (4)


00678
どのやうな解釈も人に拒み得ずただしづかなる死顔にして
ドノヤウナ カイシャクモヒトニ コバミエズ タダシヅカナル シニガオニシテ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.83
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (6)


00679
エゴイストの死ぞと互に蔑しつつ悲しみを遣らふ言葉とならず
エゴイストノ シゾトカタミニ ナミシツツ カナシミヲヤラフ コトバトナラズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.83
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (5)


00680
野の果てに風を招びつつ立つ一樹コートに喪服つつみて歩む
ノノハテニ カゼヲヨビツツ タツヒトキ コートニモフク ツツミテアユム

『不文の掟』(四季書房 1960) p.84
【初出】 『形成』 1958.6 灯かげ (4)


00681
遺されし埴輪まもりて一日ゐき砂に足あと埋めつつゆく
ノコサレシ ハニワマモリテ ヒトヒヰキ スナニアシアト ウズメツツユク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.84
【初出】 『短歌研究』 1958.1 夕占 (3)


00682
幾たびか草の穂絮のよぎる空季ぞ移ろふ人亡きあとに
イクタビカ クサノホワタノ ヨギルソラ トキゾウツロフ ヒトナキアトニ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.84
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (20)