ともる駅


00750
栃の実のたえまなく降る木の間ゆゑ夜すがら木菟の鳴きとほしたり
トチノミノ タエマナクフル コノマユヱ ヨスガラヅクノ ナキトホシタリ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.111
【初出】 『短歌研究』 1959.4 占象 (8)


00751
離ればなれの心となりて歩みゐつ坂のぼりつめて点る駅見ゆ
ハナレバナレノ ココロトナリテ アユミヰツ サカノボリツメテ トモルエキミユ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.111
【初出】 『形成』 1957.11 月かげ (2)


00752
失へる耳環のゆくへ思ひゐしこころ愕く灯をつけられて
ウシナヘル ミミワノユクヘ オモヒヰシ ココロオドロク ヒヲツケラレテ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.112
【初出】 『短歌研究』 1959.4 占象 (10)


00753
同意語の幾つを紙に書き並めて何目論むといふにもあらず
ドウイゴノ イクツヲカミニ カキナメテ ナニモクロムト イフニモアラズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.112
【初出】 『短歌』 1958.3 夜陰のおと (13)


00754
向きを替へて来し埴輪ゆゑ月のかげうつろなる目にさすときあらむ
ムキヲカヘテ コシハニワユヱ ツキノカゲ ウツロナルメニ サストキアラム

『不文の掟』(四季書房 1960) p.112
【初出】 『短歌研究』 1958.1 夕占 (5)


00755
月の夜の鴟尾は照りつつたかむらのけぶかき囲繞よりのがれ得ず
ツキノヨノ シビハテリツツ タカムラノ ケブカキイジョウ ヨリノガレエズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.113
【初出】 『短歌研究』 1958.1 夕占 (4)


00756
たまひたる遺品の壺の白磁冱え花無きときに満ちてしづけし
タマヒタル イヒンノツボノ ハクジサエ ハナナキトキニ ミチテシヅケシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.113
【初出】 『形成』 1958.3 冬の季語 (3)


00757
麻布を被へる夜の台秤測りつかれて人も眠らむ
アサヌノヲ オホヘルヨルノ ダイバカリ ハカリツカレテ ヒトモネムラム

『不文の掟』(四季書房 1960) p.113
【初出】 『短歌研究』 1959.4 占象 (7)