目次
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全短歌(歌集等)
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不文の掟
季秋のころ
仔馬らを
みづうみの
枯れ野より
行事繁き
空き家と
いつの日に
編みさしの
溶けがたき
00766
仔馬らを集めて人の去りゆけり霧らひゐて野は昏れやすからむ
コウマラヲ アツメテヒトノ サリユケリ キラヒヰテノハ クレヤスカラム
『不文の掟』(四季書房 1960) p.117
【初出】
『形成』 1958.7 夜景 (1)
00767
みづうみの水晦みつつ対岸は黄玉いろにそよぐ枯れ原
ミヅウミノ ミズクラミツツ タイガンハ トパーズイロニ ソヨグカレハラ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.117
【初出】
『形成』 1958.5 春信 (3)
00768
枯れ野より枯れ野へ渡る土橋ゆゑ水の澄めるを誰も見ざらむ
カレノヨリ カレノヘワタル ドバシユヱ ミズノスメルヲ タレモミザラム
『不文の掟』(四季書房 1960) p.118
【初出】
『形成』 1959.1 初冬のころ (4)
00769
行事繁き季節も過ぎむ落ち柿の腐つ匂ひを夜毎に嗅ぎて
ギョウジシゲキ キセツモスギム オチガキノ クダツニオヒヲ ヨゴトニカギテ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.118
【初出】
『形成』 1959.1 初冬のころ (3)
00770
空き家となりてひひらぎ咲きゐしが委しく知らむことを願はず
アキイヘト ナリテヒヒラギ サキヰシガ クハシクシラム コトヲネガハズ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.118
【初出】
『形成』 1958.1 秋郊 (18)
00771
いつの日につかむ勝負か惑ひつつ書く文字罫を越ゆることなし
イツノヒニ ツカムショウブカ マドヒツツ カクモジケイヲ コユルコトナシ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.119
【初出】
『形成』 1958.12 季秋 (3)
00772
編みさしのまま夏を越せしセーターも肩冷ゆる夜のかなしみ誘ふ
アミサシノ ママナツヲコセシ セーターモ カタヒユルヨノ カナシミサソフ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.119
【初出】
『形成』 1960.1 霜月抄 (3)
00773
溶けがたき硼砂をグラスに透かしつつ指紋憚る罪にもうとし
トケガタキ ホウシャヲグラスニ スカシツツ シモンハバカル ツミニモウトシ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.119
【初出】
『形成』 1958.6 灯かげ (2)