目次
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全短歌(歌集等)
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不文の掟
冬の塑像
落ちてゆく
塑像にて
石蕗の葉の
空席の
失ひし
目に見えず
遠景に
推し量り
如何ならむ
水滴を
00793
落ちてゆく眠りのなかにまざまざと見えて昇れぬ楷梯を持つ
オチテユク ネムリノナカニ マザマザト ミエテノボレヌ キザハシヲモツ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.128
【初出】
『形成』 1958.1 秋郊 (7)
00794
塑像にてしづかに双手あげゐたり雨に八つ手の花のけぶらふ
ソゾウニテ シヅカニモロテ アゲヰタリ アメニヤツデノ ハナノケブラフ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.128
【初出】
『短歌研究』 1958.1 夕占 (15)
00795
石蕗の葉の光れる夜の道狭めあやしみ合ひてすれ違ひたる
ツハノハノ ヒカレルヨルノ ミチセバメ アヤシミアヒテ スレチガヒタル
『不文の掟』(四季書房 1960) p.129
【初出】
『短歌』 1958.3 夜陰のおと (18)
00796
空席の一つをめぐる確執に遠くしてわが書庫のあけくれ
クウセキノ ヒトツヲメグル カクシツニ トオクシテワガ ショコノアケクレ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.129
【初出】
『短歌研究』 1958.1 夕占 (14)
00797
失ひし版図を憶ふごとくゐて草なびくとき尾根光る見ゆ
ウシナヒシ ハンズヲオモフ ゴトクヰテ クサナビクトキ オネヒカルミユ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.129
【初出】
『短歌研究』 1958.1 夕占 (2)
00798
目に見えず何よぎるとも知れぬ空仰ぎつつ無告の一人かわれも
メニミエズ ナニヨギルトモ シレヌソラ アオギツツムコクノ ヒトリカワレモ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.130
【初出】
『形成』 1958.12 季秋 (1)
00799
遠景に藁家のありて灯ともれりふと人の出でて何か捨てたる
エンケイニ ワラヤノアリテ ヒトモレリ フトヒトノイデテ ナニカステタル
『不文の掟』(四季書房 1960) p.130
【初出】
『形成』 1958.1 秋郊 (16)
00800
推し量り思ふ自在を寂しめり生きておはせし日より続きて
オシハカリ オモフジザイヲ サビシメリ イキテオハセシ ヒヨリツヅキテ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.130
【初出】
『短歌研究』 1958.1 夕占 (6)
00801
如何ならむ日にか描きしボンネットの少女像遺作のなかに混れり
イカナラム ヒニカエガキシ ボンネットノ ショウジョゾウイサクノ ナカニマジレリ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.131
【初出】
『形成』 1958.11 秋意 (2)
00802
水滴を光らせて牛を洗ふさま橋渡り来て遠し故郷も
スイテキヲ ヒカラセテウシヲ アラフサマ ハシワタリキテ トオシコキョウモ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.131
【初出】
『形成』 1959.1 初冬のころ (1)