推移


00803
足もとより崩るる思ひ幾たびかほめきを消さむ手段のみして
アシモトヨリ クズルルオモヒ イクタビカ ホメキヲケサム テダテノミシテ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.132
【初出】 『形成』 1958.2 冬木 (1)


00804
人が変りしやうなる夫と伝ふれど住む街の名を問ふこともなし
ヒトガカワリシ ヤウナルツマト ツタフレド スムマチノナヲ トフコトモナシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.132
【初出】 『形成』 1959.10 物語り (2)


00805
朝よりきざす寂しさ繊切りの人蔘を母の粥にまぜゐて
アシタヨリ キザスサビシサ センギリノ ニンジンヲハハノ カユニマゼヰテ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.133
【初出】 『形成』 1960.3 残冬抄 (8)


00806
病むといふ噂を聴けばまた惑ふいつまでわれを放たぬ夫か
ヤムトイフ ウワサヲキケバ マタマドフ イツマデワレヲ ハナタヌツマカ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.133
【初出】 『形成』 1959.3 季冬のころ (2)


00807
転勤を知らす葉書の一枚は日を経て届く妻のわが手に
テンキンヲ シラスハガキノ イチマイハ ヒヲヘテトドク ツマノワガテニ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.133
【初出】 『形成』 1959.10 物語り (4)