目次
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全短歌(歌集等)
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不文の掟
夜色
ジギタリス
遺されし
菜の花に
乱心を
ひといろに
嚢み置く
完計に
靄厚き
波瀾呼ぶ
わが合図
00819
ジギタリス交錯し立つ夜の庭闇をふかめて誰か人ゐる
ジギタリス コウサクシタツ ヨルノニワ ヤミヲフカメテ タレカヒトヰル
『不文の掟』(四季書房 1960) p.138
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (1)
00820
遺されし塑像が招く追憶に故意にはぐれて逢はぬ夜ありき
ノコサレシ ソゾウガマネク ツイオクニ コイニハグレテ アハヌヨアリキ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.138
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (2)
00821
菜の花に鳥ひそみ啼く日なりしをへだてて今も疎水の声す
ナノハナニ トリヒソミナク ヒナリシヲ ヘダテテイマモ ソスイノコエス
『不文の掟』(四季書房 1960) p.139
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (3)
00822
乱心を装ほふ罪もをかし得ず過ぎてさびしき執念のあと
ランシンヲ ヨソホフツミモ ヲカシエズ スギテサビシキ シュウネンノアト
『不文の掟』(四季書房 1960) p.139
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (4)
00823
ひといろに昏れて影なす苧環の花踏みわけて遁れ得べしや
ヒトイロニ クレテカゲナス ヲダマキノ ハナフミワケテ ノガレウベシヤ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.139
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (5)
00824
嚢み置くことも激しき消耗と夜更けのプールサイド過ぎゆく
ツツミオク コトモハゲシキ ショウモウト ヨフケテプール サイドスギユク
『不文の掟』(四季書房 1960) p.140
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (6)
00825
完計に近づく時間妨げてローマ字たどる少年のこゑ
カンケイニ チカヅクジカン サマタゲテ ローマジタドル ショウネンノコヱ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.140
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (7)
00826
靄厚き夜となりゐたり朱筆を洗ひたる水捨てに出づれば
モヤアツキ ヨトナリヰタリ シュフデヲ アラヒタルミズ ステニイヅレバ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.140
【初出】
『形成』 1959.11 秋近く (1)
00827
波瀾呼ぶたくらみにみづから溺れゆき見えぬプールに水音うごく
ハランヨブ タクラミニミヅカラ オボレユキ ミエヌプールニ ミズオトウゴク
『不文の掟』(四季書房 1960) p.141
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (8)
00828
わが合図待ちて従ひ来し魔女と落ちあふくらき遮断機の前
ワガアイズ マチテシタガヒ キシマジョト オチアフクラキ シャダンキノマエ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.141
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (9)