目次
/
全短歌(歌集等)
/
不文の掟
水漬く花
過たむ
電話待つ
かさなれる
傾ける
年月の
沢潟の
使ひ得ぬ
遠巻きに
00829
過たむ予感鎮めて花咲ける満天星の垣を出づる朝々
アヤマタム ヨカンシズメテ ハナサケル ドウダンノカキヲ イヅルアサアサ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.142
【初出】
『形成』 1959.7 すぎゆく日々 (1)
00830
電話待つ窓より虹の立つ見えて街のいづくにゐる人ならむ
デンワマツ マドヨリニジノ タツミエテ マチノイヅクニ ヰルヒトナラム
『不文の掟』(四季書房 1960) p.142
【初出】
『形成』 1957.12 危惧 (5)
00831
かさなれる影またおもむろに遠ざけて夕陽に早苗植ゑ合ふを見つ
カサナレル カゲマタオモムロニ トオザケテ ユウヒニサナヘ ウヱアフヲミツ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.143
【初出】
『形成』 1959.7 すぎゆく日々 (2)
00832
傾ける土橋を日々に草蔽ふ人間のなすたくらみに似て
カタムケル ドバシヲヒビニ クサオオフ ニンゲンノナス タクラミニニテ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.143
【初出】
『形成』 1959.7 すぎゆく日々 (6)
00833
年月の模索のさまをあばくごと掘り返されてゆく木の根見つ
トシツキノ モサクノサマヲ アバクゴト ホリカエサレテ ユクキノネミツ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.143
【初出】
『形成』 1958.2 冬木 (3)
00834
沢潟の水漬きつつ咲く日々の果て離合のことも肯はむとす
オモダカノ ミヅキツツサク ヒビノハテ リゴウノコトモ ウベナハムトス
『不文の掟』(四季書房 1960) p.144
【初出】
『形成』 1959.7 すぎゆく日々 (4)
00835
使ひ得ぬ語彙のみ思ひ浮ぶ日よ出で来て梅の落ち実を拾ふ
ツカヒエヌ ゴイノミオモヒ ウカブヒヨ イデキテウメノ オチミヲヒロフ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.144
【初出】
『形成』 1959.8 雨のあと (1)
00836
遠巻きにされつつ何をしゐたらむ竦む思ひは目ざめて続く
トオマキニ サレツツナニヲ シヰタラム スクムオモヒハ メザメテツヅク
『不文の掟』(四季書房 1960) p.144
【初出】 『短歌研究』 1959.4 占象 (9)