占象


00848
太占の骨とおぼしき骨片を洗へり沼の水濁しつつ
フトマニノ ホネトオボシキ コツヘンヲ アラヘリヌマノ ミズニゴシツツ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.149
【初出】 『短歌研究』 1959.4 占象 (1)


00849
占骨の破片寄せつつ神託をよび戻すべき賀詞も知れず
ウラホネノ ハヘンヨセツツ シンタクヲ ヨビモドスベキ ヨゴトモシレズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.149
【初出】 『短歌研究』 1959.4 占象 (13)


00850
寄り来てはたちまち散らふ水すまし結論を急ぐわれを阻むや
ヨリキテハ タチマチチラフ ミズスマシ ケツロンヲイソグ ワレヲハバムヤ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.150
【初出】 『短歌研究』 1959.4 占象 (2)


00851
鹿占の亀裂の痕を透かしゐてひとりの心さへ見抜き得ず
シシウラノ キレツノアトヲ スカシヰテ ヒトリノココロ サヘミヌキエズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.150
【初出】 『短歌研究』 1959.4 占象 (5)


00852
如何ならむ人の出入りに日を逐ひて吊りあげられゆく埴輪の値
イカナラム ヒトノデイリニ ヒヲオヒテ ツリアゲラレユク ハニワノアタヒ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.150
【初出】 『形成』 1959.8 雨のあと (4)


00853
とほき世の効用の痕の歪みもち石斧は影にかたちを重ぬ
トホキヨノ コウヨウノアトノ ヒヅミモチ セキフハカゲニ カタチヲカサヌ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.151
【初出】 『短歌研究』 1959.4 占象 (14)


00854
太占に農事ゆだねし日を遠く雨乞ひの太鼓夜すがら鳴らす
フトマニニ ノウジユダネシ ヒヲトオク アマゴヒノタイコ ヨスガラナラス

『不文の掟』(四季書房 1960) p.151
【初出】 『短歌研究』 1959.4 占象 (15)


00855
月明き夜毎眠りのふかくしてすでに解かれし呪縛と思ふ
ツキアカキ ヨゴトネムリノ フカクシテ スデニトカレシ ジュバクトオモフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.151
【初出】 『形成』 1957.11 月かげ (5)