目次
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全短歌(歌集等)
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不文の掟
霧降る広場
手懸りの
銭苔の
銅貨投げて
先立てる
草藤の
同じ道を
なまぬるき
黒ずみし
旅先の
待たれゐむ
同じバスに
00864
手懸りのなくて歩むにいりくめる道のいづくにも木犀匂ふ
テガカリノ ナクテアユムニ イリクメル ミチノイヅクニモ モクセイニオフ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.155
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (11)
00865
銭苔の貼りつける土踏みゆきて先蹤を越えむ歩みに遠し
ゼニゴケノ ハリツケルツチ フミユキテ センショウヲコエム アユミニトオシ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.155
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (12)
00866
銅貨投げて愛を占ふとふローマの泉幾夜の夢に光りてやまず
ドウカナゲテ アイヲウラナフトフ ローマノイズミ イクヨノユメニ ヒカリテヤマズ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.156
【初出】
『形成』 1956.3 冬草 (10)
00867
先立てる背後読みつつ蹤きゆくと朝より鈍りやすき心ぞ
サキダテル ソビラヨミツツ ツキユクト アサヨリナマリ ヤスキココロゾ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.156
【初出】
『形成』 1959.11 秋近く (5)
00868
草藤の花に残れる夕の雨告げたき語彙も日々に移ろふ
クサフヂノ ハナニノコレル ユフノアメ ツゲタキゴイモ ヒビニウツロフ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.156
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (14)
00869
同じ道を通ふほかなき朝夕に藍深めゆく常山木の実あり
オナジミチヲ カヨフホカナキ アサユウニ アイフカメユク クサギノミアリ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.157
00870
なまぬるきわれと詰れる妹の出でゆきて仔犬に何か問ひゐる
ナマヌルキ ワレトナジレル イモウトノ イデユキテコイヌニ ナニカトヒヰル
『不文の掟』(四季書房 1960) p.157
00871
黒ずみしバナナ積みあげ売れる見つ奇禍待つごとき夜の街角
クロズミシ バナナツミアゲ ウレルミツ キカマツゴトキ ヨルノマチカド
『不文の掟』(四季書房 1960) p.157
00872
旅先の夜にゐるごとき風の音はづせし耳環机に置きて
タビサキノ ヨニヰルゴトキ カゼノオト ハヅセシミミワ ツクエニオキテ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.158
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (13)
00873
待たれゐむ手紙なれども萩の花咲きたりとのみ書きて封閉づ
マタレヰム テガミナレドモ ハギノハナ サキタリトノミ カキテフウトヅ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.158
【初出】
『形成』 1956.10 ものの音 (4)
00874
同じバスに乗り合ふのみの日々過ぎて今朝は静かに霧降る広場
オナジバスニ ノリアフノミノ ヒビスギテ ケサハシズカニ キリフルヒロバ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.158
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (15)