目次
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全短歌(歌集等)
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不文の掟
冬の箴言
風のなかに
駅を出でて
釈明を
杭を打ち
流れつつ
ほの白く
有機物の
降り出でて
塗りつぶし
落体と
突き落とす
00888
風のなかに身を反らしあふ冬の木々けぢめなく待つ時間流れて
カゼノナカニ ミヲソラシアフ フユノキギ ケヂメナクマツ ジカンナガレテ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.164
【初出】
『短歌』 1960.3 冬の言葉 (1)
00889
駅を出でて枯れ野の口に懸かる橋バスを渡してより渡りゆく
エキヲイデテ カレノノクチニ カカルハシ バスヲワタシテ ヨリワタリユク
『不文の掟』(四季書房 1960) p.164
【初出】
『短歌』 1960.3 冬の言葉 (3)
00890
釈明を下待つわれも寂しきに落ち葉は深し轍うづめて
シャクメイヲ シタマツワレモ サビシキニ オチバハフカシ ワダチウヅメテ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.165
【初出】
『短歌』 1960.3 冬の言葉 (19)
00891
杭を打ちゐたる人らも去りゆけば野になづさひて草火の煙
クイヲウチ ヰタルヒトラモ サリユケバ ノニナヅサヒテ クサビノケムリ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.165
【初出】
『短歌』 1960.3 冬の言葉 (14)
00892
流れつつ向きを変へゆく芥見つ箴言などに拘る日にて
ナガレツツ ムキヲカヘユク アクタミツ シンゲンナドニ コダハルヒニテ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.165
【初出】
『短歌』 1960.3 冬の言葉 (4)
00893
ほの白く鶏舎に残りてゐし一羽思ひ倦みたるごとくはばたく
ホノジロク トヤニノコリテ ヰシイチワ オモヒウミタル ゴトクハバタク
『不文の掟』(四季書房 1960) p.166
【初出】
『形成』 1958.9 夏日 (1)
00894
有機物の燃ゆる臭ひと思ひゐて肩へ集まりくる疲れあり
ユウキブツノ モユルニオヒト オモヒヰテ カタヘアツマリ クルツカレアリ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.166
【初出】
『短歌』 1960.3 冬の言葉 (17)
00895
降り出でて石の粗面を濡らす雨人も蹤きゆく犬もしづけし
フリイデテ イシノソメンヲ ヌラスアメ ヒトモツキユク イヌモシヅケシ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.166
【初出】
『短歌』 1960.3 冬の言葉 (6)
00896
塗りつぶしゐる夜の時間風疼く雑木林を背後に置きて
ヌリツブシ ヰルヨノジカン カゼウヅク ゾウキバヤシヲ ソビラニオキテ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.167
【初出】
『短歌』 1960.3 冬の言葉 (9)
00897
落体となりゆくわが身思ふまで壁に吊られてゆがめるコート
ラクタイト ナリユクワガミ オモフマデ カベニツラレテ ユガメルコート
『不文の掟』(四季書房 1960) p.167
【初出】
『短歌』 1960.3 冬の言葉 (12)
00898
突き落とす刹那に醒めし夢のあと色無き雲の流れてやまず
ツキオトス セツナニサメシ ユメノアト イロナキクモノ ナガレテヤマズ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.167
【初出】
『短歌』 1960.3 冬の言葉 (22)