目次
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全短歌(歌集等)
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不文の掟
夜の潮騒
シグナルに
人のさす
鉢の外に
切実に
中年の
海風に
激しゆく
如何ならむ
00923
シグナルに幾たび夜の靄きざしつひに聴き得ぬ語彙かも知れず
シグナルニ イクタビヨルノ モヤキザシ ツヒニキキエヌ ゴイカモシレズ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.178
00924
人のさす黒の蝙蝠傘大きくて匿まはれゆく錯覚あまし
ヒトノサス クロノカウモリ オオキクテ カクマハレユク サッカクアマシ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.178
【初出】
『形成』 1960.10 香華 (3)
00925
鉢の外に魚のはみ出しゐる童画はみ出て赤き尾鰭がそよぐ
ハチノソトニ ウオノハミダシ ヰルドウガ ハミデテアカキ オヒレガソヨグ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.179
【初出】
『短歌』 1960.3 冬の言葉 (21)
00926
切実にわが名呼ばれし思ひしつ幾日経て夜の潮騒のなか
セツジツニ ワガナヨバレシ オモヒシツ イクヒヘテヨノ シオサイノナカ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.179
【初出】
『形成』 1958.1 秋郊 (12)
00927
中年の知恵強ひられてゆく日々か流木を洗ひながき上げ潮
チュウネンノ チエシヒラレテ ユクヒビカ リュウボクヲアラヒ ナガキアゲシオ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.179
【初出】
『形成』 1960.10 香華 (4)
00928
海風に余韻奪はれつつ質し合ひし言葉も過ぎて還らず
ウミカゼニ ヨインウバハレ ツツタダシ アヒシコトバモ スギテカエラズ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.180
【初出】
『形成』 1960.10 香華 (2)
00929
激しゆく相手をなだめゐる気配旅の夜更けの幻聴に似て
ゲキシユク アイテヲナダメ ヰルケハイ タビノヨフケノ ゲンチョウニニテ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.180
【初出】
『短歌』 1959.11 夜色 (10)
00930
如何ならむ反証も今は待ちゐぬに耳澄ますごとき夜のをりふし
イカナラム ハンショウモイマハ マチヰヌニ ミミスマスゴトキ ヨルノヲリフシ
『不文の掟』(四季書房 1960) p.180
【初出】
『形成』 1959.12 秋深む日々 (5)